理事の資格要件|社会福祉法・審査基準・審査要領による確認ポイント
はじめに
社会福祉法人の理事には、法律・審査基準・審査要領で定められた複数の資格要件があります。
理事の改選期には、理事候補者が資格要件を満たしているかどうかを選任の場(評議員会)で適切に確認し、記録として残すことが重要です。
この記事では、
- 社会福祉法の資格要件
- 審査基準に定められた要件
- 審査要領に記された具体例
- 評議員会での確認方法
を体系的に整理して解説します。
本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、厚生労働省の科目定義に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。
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1.まず押さえておくべきポイント(全体像)
社会福祉法人の理事には、次の4つの要件のいずれかに該当している必要があります。
| No | 資格要件(社会福祉法) |
|---|---|
| ① | 社会福祉事業の経営に関する識見を有する者 |
| ② | 法人が事業を行う区域の福祉に通じている者 |
| ③ | 法人が施設を設置する場合はその管理者(施設長) |
加えて、審査基準では次の要件も求められます。
● 審査基準の要件
社会福祉事業について熱意と理解を有し、実際に法人運営の職責を果たし得る者
2.社会福祉法が定める理事の資格要件(法的根拠)
社会福祉法 第44条では、理事に求められる資格要件が次のように整理されています。
- 理事は6人以上
- うち①〜③のいずれかに該当する者を含む
① 社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
社会福祉法人の経営経験、福祉事業に関する専門知識、行政・法人運営に関する経験などが該当します。
② 事業区域の福祉に通じている者
→ 実務ではここが最も確認ニーズの高いポイント
審査要領では、例として以下が挙げられています。
- 社会福祉協議会の役職員
- 民生委員・児童委員
- 福祉関係ボランティア団体の代表者
- 医師・保健師・看護師などの保健医療関係者
- 自治会・町内会の役員 など
③ 施設長(法人が施設を設置している場合)
▼ 理事になる施設長の人数
- 1名以上いれば足りる
(全ての施設長を理事にする必要はない)
▼ 「施設」の範囲
- 原則:第1種社会福祉事業の施設
- 例外:法人が運営する事業の中核となる第2種施設も含む
(保育所、就労継続支援B型、就労移行支援など)
3.審査基準が求める追加要件(重要)
審査基準では、理事としてふさわしい人物像が明確に示されています。
社会福祉事業について熱意と理解を有し、実際に法人運営の職責を果たし得る者
これは「人格・姿勢・実行力」を含めた要件で、単に経歴だけではなく、法人運営に参画できるかどうかも確認する必要があります。
3 理事
出典:厚生労働省「社会福祉法人審査基準」より
(1) 理事は、社会福祉事業について熱意と理解を有し、かつ、実際に法人運営の職責を果たし得る者であること。
4.事業区域の福祉に通じている者の具体例(審査要領)
審査要領には次のように例示されています。
- 社協の役職員
- 民生委員・児童委員
- 福祉団体・ボランティア団体の代表
- 医師・看護師等の保健医療関係者
- 自治会・町内会の役員 など
▼ 重要な注意点
審査要領には「例えば」と明記されており、必ずしも上記に限定されていません。
上記に類する活動・役職でも該当し得るため、選任の際には次の点を記録しておくと安心です。
- どのような点で実情に通じていると判断したか
- 参考資料(略歴、活動内容、証跡)
第3 法人の組織運営
出典 厚生労働省「社会福祉法人 審査要領」より
(2) 「法人が行う事業の区域における福祉に関する実情に通じている者」は、例えば、次のような者が該当すること。
ア 社会福祉協議会等社会福祉事業を行う団体の役職員
イ 民生委員・児童委員
ウ 社会福祉に関するボランティア団体、親の会等の民間社会福祉団体の代表者等
エ 医師、保健師、看護師等保健医療関係者
オ 自治会、町内会、婦人会及び商店会等の役員その他その者の参画により施設運営や在宅福祉事業の円滑な遂行が期待できる者
5.評議員会で行うべき「資格要件の確認と記録」
理事の資格要件は、評議員会の選任決議の中で必ず説明・記録しておく必要があります。
▼ 評議員会で確認すべき内容
- 候補者の履歴書・略歴・誓約書を基に資格要件を説明
- 6名以上であることの確認
- ①〜③の要件を満たす者が含まれることの確認
- 審査基準に照らして適切である旨の説明
- 議事録に記録
▼ 添付書類
- 理事候補者全員の履歴書
(新任・再任いずれも必要) - 誓約書(理事になれない者に該当しない旨の確認と合わせて取得)
6.施設長が理事となる場合の注意点
- 施設長が複数いる場合でも、1名以上が理事であれば可
- 「施設」の範囲は第1種事業が原則
- ただし、保育・就労支援など中核事業の第2種施設も該当
- どの施設長を理事に選任したか、その理由を説明できるようにしておく
(注)「施設の管理者」については、当該法人が複数の施設を設置している場合は、全ての施設の管理者を理事とする必要があるものではなく、施設の管理者のうち1名以上が理事に選任されていれば足りる。
なお、この場合の「施設」とは、原則として、法第62 条第1項の第1種社会福祉事業の経営のために設置した施設をいうが、第2種社会福祉事業であっても、保育所、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所等が法人が経営する事業の中核である場合には、当該事業所等は同様に取扱う。
厚生労働省 「社会福祉法人指導監査実施要綱(指導監査ガイドライン)」より引用
7.チェックリスト(実務でそのまま使える)
- 理事は6名以上か
- ①〜③の資格要件を満たす者が含まれているか
- その根拠資料(履歴書等)が揃っているか
- 審査基準に照らして職責を果たし得る人物か
- 評議員会で資格要件を説明した記録があるか
- 全員分の履歴書を議事録に添付しているか
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参考条文
理事の資格要件
(役員の資格等)
第四十四条 第四十条第一項の規定は、役員について準用する。3 理事は六人以上、監事は二人以上でなければならない。
4 理事のうちには、次に掲げる者が含まれなければならない。
社会福祉法より
一 社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
二 当該社会福祉法人が行う事業の区域における福祉に関する実情に通じている者
三 当該社会福祉法人が施設を設置している場合にあつては、当該施設の管理者
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記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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