その他の固定資産(建物)|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と考え方
はじめに
社会福祉法人が保有する資産は、その性質に応じて
基本財産、その他財産、公益事業用財産、収益事業用財産
に区分されます。(社会福祉法人審査基準上の資産の分類です)
このうち その他の固定資産 は、
基本財産には該当しないものの、
長期にわたって保有・使用される資産を整理する区分です。
その他の固定資産(建物)は、
基本財産に該当しない建物及び建物附属設備 を整理するための勘定科目です。
| 「ホームページ利用上のご注意について」をお読み頂き、これらの条件にご同意の上ご利用ください。 |
🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui
-2-1024x417.jpg)
-1024x417.jpg)
厚生労働省の勘定科目の説明
(その他の固定資産)建物
出典:「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
基本財産以外に帰属する建物及び建物附属設備をいう。
この定義どおり、
判断の基準となるのは
建物の用途そのものではなく、基本財産に該当するかどうか
という点です。
社会福祉法人における資産区分
社会福祉法人審査基準では、
法人の資産は次のように区分されています。
- 基本財産
- その他財産
- 公益事業用財産(公益事業を行う場合)
- 収益事業用財産(収益事業を行う場合)
社会福祉法人会計では、
このうち 基本財産以外の建物 が
その他の固定資産(建物)として整理されます。
基本財産(建物)との違い
その他の固定資産(建物)を理解するうえで重要なのが、
基本財産(建物)との違い です。
基本財産(建物)は、
- 社会福祉施設の用に供される建物
- 法人存続の基礎となる建物
として位置づけられ、
原則として 基本財産に区分しなければならない
とされています。
これに対して、
その他の固定資産(建物)は、
- 社会福祉施設の用に供されていない建物
- 定款で基本財産として定められていない建物
が該当します。
その他の固定資産(建物)に該当する例
その他の固定資産(建物)として整理されるのは、
例えば次のような建物です。
- 公益事業に使用している建物
- 収益事業に使用している建物
- 事務所や倉庫など、社会福祉施設に該当しない建物
ただし、
これらの建物であっても、
法人が重要と判断し、定款で基本財産と定めた場合 には、
その他の固定資産ではなく、
基本財産(建物) に区分される点に注意が必要です。
建物に含まれる範囲
社会福祉法人会計における「建物」には、
次のものが含まれます。
- 建物本体
- 建物附属設備
建物附属設備とは、
建物に附帯し、
建物と一体となって機能する設備を指します。
具体的には、
- 冷暖房設備
- 給排水設備
- 電気設備
- 昇降設備
- 厨房設備
- 消防設備
など、
建物から取り外して独立して使用することが想定されない設備が該当します。
建物本体と建物附属設備の管理
会計上は、
建物本体と建物附属設備を合わせて
「建物」として計上します。
一方で、
管理上は両者を分けて把握することが重要 です。
その理由として、
- 建物本体と建物附属設備では
減価償却の耐用年数が異なる - 将来の修繕・更新計画を立てやすくなる
といった点が挙げられます。
そのため、
固定資産管理台帳では、
建物本体と建物附属設備を資産ごとに分けて登録する方法が多く用いられています。
建物の取得価額の考え方
その他の固定資産(建物)であっても、
取得価額の考え方は基本財産(建物)と同様です。
建物の帳簿価額
= 建物の取得に要した直接費用 + 付随費用
施設整備や建設工事では、
建物本体工事と建物附属設備工事を
一体として発注することも多いため、
見積書や請求書の内容をもとに、
合理的な基準で按分 して整理します。
管理上の留意点
その他の固定資産(建物)は、
基本財産ではないものの、
金額が大きくなることも多く、
法人運営にとって重要な資産です。
そのため、
- 基本財産との区分が適切か
- 定款の定めと整合しているか
- 固定資産管理台帳と会計帳簿が一致しているか
といった点を、
定期的に確認しておくことが重要です。
まとめ
その他の固定資産(建物)は、
- 基本財産以外に帰属する建物及び建物附属設備であること
- 社会福祉施設の用に供される建物は原則として含まれないこと
- 定款の定めにより、基本財産に切り替わる場合があること
- 建物本体と建物附属設備を分けて管理することが重要であること
これらを整理して理解しておくことで、
決算、指導監査、所轄庁対応の場面でも、
資産区分について落ち着いて説明しやすくなります。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

ホームページの各記事や事務所サービスのご案内
よく読まれている人気の記事(カテゴリー別)
- 社会福祉法人・企業主導型保育事業の質問と回答はこちら
- 社会福祉法人の役員(理事・監事)と評議員に関する手続き・監査指摘事項への対応はこちら
- 社会福祉法人会計で用いる勘定科目を科目ごとに分かりやすく解説はこちら
- 企業主導型保育事業の専門的財務監査の評価基準の解説はこちら
- 有料動画で学ぶ福祉の会計や経営はこちら
マツオカ会計事務所作成の書籍・動画・規程
20年間の社会福祉法人・福祉事業者の支援と、11年間の地方公務員の行政事務で培ったノウハウを 書籍・動画・規程 として公開しています。
ご自身で学び、法人内で活かせるコンテンツをご用意していますので、ぜひご覧ください。
▶ マツオカ会計事務所が提供する書籍・動画・規程まとめページを見る
出版中の書籍

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。





