評議員会による決議の確認 指導監査の準備として 社会福祉法人会計・法人運営
社会福祉法人の評議員会の決議
社会福祉法人の決算期では、6月頃に定時評議員会(決算評議員会)が開催されます。令和5年度は、理事、監事の改選期の法人さんも多く、決算の承認と合わせてたくさんの議案があると思います。
今回は、評議員会の決議が適正になされているかを確認してみましょう。
評議員の決議が適正に行われたか
NO. | 確認事項 | 要点 |
---|---|---|
① | 決議に必要な数の評議員が出席し,必要な数の賛成をもって行われているか。 | 定足数の確認の有無 |
② | 決議が必要な事項について,決議が行われているか。 | 議案、決議漏れの確認 |
③ | 特別決議は必要数の賛成をもって行われているか。 | 賛成の人数の確認 |
④ | 決議について特別の利害関係を有する評議員が議決に加わっていないか。 | 特別利害関係の有無の確認 |
⑤ | 評議員会の決議があったとみなされた場合(決議を省略した場合)や評議員会への報告があったとみなされた場合(報告を省略した場合)に,評議員の全員の書面又は電磁的記録による同意の意思表示があるか。 | 評議員会を省略した場合の手続きの確認 |
① 決議に必要な数の評議員が出席し,必要な数の賛成をもって行われているか。
評議員会の決議が、有効と認めれる定足数の確認です。
社会福祉法の定足数
社会福祉法には、評議員会の定足数について、以下のように定めています。
社会福祉法
(評議員会の運営)
第四十五条の九 定時評議員会は、毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。6 評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。
7 前項の規定にかかわらず、次に掲げる評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上に当たる多数をもつて行わなければならない。
出典 社会福祉法より
一 第四十五条の四第一項の評議員会(監事を解任する場合に限る。)
二 第四十五条の二十二の二において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十三条第一項の
評議員会
三 第四十五条の三十六第一項の評議員会
四 第四十六条第一項第一号の評議員会
五 第五十二条、第五十四条の二第一項及び第五十四条の八の評議員会
上の7(一~五号)の内容は以下になります。
号 | 条文 | 内容 |
---|---|---|
一 | 第四十五条の四第一項の評議員会(監事を解任する場合に限る。) | 役員または会計監査人の解任 |
二 | 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十三条第一項の評議員会 | 法人に対する損害賠償責任の一部免除 |
三 | 第四十五条の三十六第一項の評議員会 | 定款の変更 |
四 | 第四十六条第一項第一号の評議員会 | 解散 |
五 | 第五十二条、第五十四条の二第一項及び第五十四条の八の評議員会 | 法人の吸収合併契約の承認 (消滅法人・存続法人) 法人の新設合併契約の承認 |
法人の定款の定足数
社会福祉法人の定款でも、以下のように定めていると思います。
社会福祉法人 定款例
(決議)
第一三条 評議員会の決議は、決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の過半数が出席し、その過半数をもって行う。2 前項の規定にかかわらず、次の決議は、決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。
出典 厚生労働省通知 「社会福祉法人の認可について 別紙2 定款例」より
(1) 監事の解任
(2) 定款の変更
(3) その他法令で定められた事項
定足数の確認の記録
法人さんでは、評議員会の開催時に、出席者(定足数)の確認はされていると思います。
ポイントは、議事録に、定足数の確認がされたことや、出席した評議員の数が記録されていることになります。
決議が必要な事項について,決議が行われているか。
評議員会での決議が必要な事項は、社会福祉法と法人の定款に規定されています。
社会福祉法
社会福祉法では、評議員会の決議事項について、下のように定めています。
社会福祉法
(評議員会の権限等)
出典 社会福祉法より
第四十五条の八 評議員会は、全ての評議員で組織する。
2 評議員会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 評議員会は、第五項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する。
法人の定款
定款例を基に、確認してみましょう。
法人の定款(例)
第11条 評議員会は、次の事項について決議する。
(1) 理事及び監事<並びに会計監査人>の選任又は解任
(2) 理事及び監事の報酬等の額
(3) 理事及び監事並びに評議員に対する報酬等の支給の基準
(4) 計算書類(貸借対照表及び収支計算書)及び財産目録の承認
(5) 定款の変更
(6) 残余財産の処分
(7) 基本財産の処分
(8) 社会福祉充実計画の承認
(9) 事業計画及び収支予算
(10) 臨機の措置(予算外の新たな義務の負担及び権利の放棄)
(11) 公益事業・収益事業に関する重要な事項
(12) 解散
(13) その他評議員会で決議するものとして法令又はこの定款で定められた事項(下線の項目は、租税特別措置法第40条の適用を受ける評議員会の決議とされるものです)
出典 厚生労働省通知「社会福祉法人の認可について 別紙2 定款例」より
評議員会の決議事項の注意点
定款等に定められていない事項を決議すること
評議員会では、定款や社会福祉法に定めている事項以外のものを決議することができません。
社会福祉法
(評議員会の権限等)
出典 社会福祉法より
第四十五条の八 評議員会は、全ての評議員で組織する。
2 評議員会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 評議員会は、第五項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する。
評議員会の決議事項について、理事会等で決議すること
社会福祉法により評議員会の決議事項とされている事項について、理事会決議や理事長の専決などによって決定することはできません。
また、そのような定款の規定は無効となることに注意しましょう。
社会福祉法
(評議員会の権限等)
出典 社会福祉法より
第四十五条の八 評議員会は、全ての評議員で組織する。
2 評議員会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 この法律の規定により評議員会の決議を必要とする事項について、理事、理事会その他の評議員会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。
令和5年6月の評議員会の場合には、
(1)理事・監事の選任
(4)計算書類の承認
その他該当する項目の決議が行われたことが、議事録に記録されていることです。
特別決議は必要数の賛成をもって行われているか。
特別決議が必要な議案については、定款に規定する数以上の賛成が必要になります。
法人の定款例
2 前項の規定にかかわらず、次の決議は、決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。
(1) 監事の解任
(2) 定款の変更
(3) その他法令で定められた事項
(3) その他法令で定められた事項には、以下のようなものがあります。
その他法令で定められた事項
- 理事、(監事)、会計監査人の解任
- 理事等の責任の免除 全ての免除(※総評議員の同意が必要)
- 理事等の責任の免除 一部の免除
- 解散の決議
- 合併の承認
決議が決議について特別の利害関係を有する評議員が議決に加わっていないか。
評議員会の議案に対して特別な利害関係を有する評議員は、決議に加わることができません。
特別の利害関係
「特別の利害関係」とは、評議員が、その決議について、法人に対する善管注意義務(社会福祉法第 38 条、民法第 644 条)を履行することが困難と認められる利害関係を意味するものと言われています。
議事録には、「特別な利害関係を有する評議員の有無を確認した旨」の記録が大切になります。
決議を省略した場合や報告を省略した場合に,評議員の全員の書面又は電磁的記録による同意の意思表示があるか
令和2年度以降は、感染防止対策から、評議員会の決議を省略した法人さんもあるかと思います。
このような場合には、全ての評議員から、書面または、電磁的記録により同意の意思表示を受けておく必要があります。
受け取った書類などを確認しておきましょう。
次回はこのテーマです。
- 評議員会の議事録(記録)の確認
- 法人運営・指導監査の準備の記事の一覧はこちら
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