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役員と役員会・指導監査の準備

評議員会の決議|定足数・決議事項・特別決議・特別利害関係・決議省略まで実務で必ず押さえるポイント

はじめに

社会福祉法人の評議員会では、

  • 決算の承認
  • 役員(理事・監事)の選任
  • 定款変更
  • 合併・解散 といった重要事項
    を決議します。

そのため、評議員会の決議が法令に沿って適正に行われているかは、
指導監査でも必ず確認される重要項目です。

本記事では、
評議員会の決議の基本原則、特別決議、特別利害関係、決議省略(みなし決議)
など、実務で押さえるべきポイントを体系的に解説します。


本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。

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1.評議員会の決議が適正に行われているか(確認の全体像)

評議員会の決議を確認する際には、次の5点が基本となります。

No確認内容
定足数を満たしているか
法令・定款で決議が必要な事項が、適切に決議されているか
特別決議は適正な賛成数を満たしているか
特別の利害関係を有する評議員が議決に参加していないか
決議省略の場合、全員の書面・電磁的方法による同意があるか

以下、それぞれを詳しく整理します。


2.定足数(出席・賛成数)の確認

評議員会の決議が成立するには、
社会福祉法 第45条の9 第6項 により、次の要件が必要です。

▼ 通常の決議

  • 議決に加わることができる評議員の過半数が出席
  • その 過半数の賛成

定款でより厳しい基準を定めることも可能です。

▼ 特別決議

法第45条の9 第7項により、次の場合は
議決に加わることができる評議員の3分の2以上の賛成
が必要です。

No内容
監事の解任
理事・監事等の損害賠償責任の一部免除
定款の変更
解散
合併など法人再編に関する事項

※ 定款で3分の2より高い割合を定めることも可能。

社会福祉法人 定款例

(決議)
第一三条 評議員会の決議は、決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の過半数が出席し、その過半数をもって行う。

2 前項の規定にかかわらず、次の決議は、決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。
(1) 監事の解任
(2) 定款の変更
(3) その他法令で定められた事項

出典 厚生労働省通知 「社会福祉法人の認可について 別紙2 社会福祉法人定款例」より

2-1.定足数の記録(議事録の重要ポイント)

実務で最も重要なのは、
議事録に「出席評議員数(定足数確認)」を記録しているか
という点です。

議事録には、次のような情報を記載します。

  • 評議員総数
  • 議決に加わることができる評議員数
  • 当日の出席評議員数
  • 定足数を満たしている旨の記録

これがないと、決議の有効性が説明できなくなるため注意が必要です。


3.評議員会の決議事項(何を決議するか)

社会福祉法 第45条の8 第2項では、
評議員会が決議できる事項を次のように限定しています。

法律に定める事項および定款で定める事項に限る

つまり、評議員会は
法令・定款に規定されていない事項を決議してはならない
ということです。


3-1.社会福祉法が定める主な決議事項

例:

  • 理事・監事の選任/解任
  • 計算書類(貸借対照表・収支計算書等)の承認
  • 定款変更
  • 残余財産の処分
  • 合併などの承認
  • 社会福祉充実計画の承認


3-2.定款に定められた決議事項

定款例では、次のような事項が挙げられています。

  • 基本財産の処分
  • 事業計画・収支予算
  • 予算外の重要な義務の負担(臨機の措置)
  • 公益事業・収益事業の重要事項

定款で評議員会に権限を与えている事項は、必ず評議員会で決議しなければなりません。

法人の定款(例)

第11条 評議員会は、次の事項について決議する。

(1) 理事及び監事<並びに会計監査人>の選任又は解任
(2) 理事及び監事の報酬等の額
(3) 理事及び監事並びに評議員に対する報酬等の支給の基準
(4) 計算書類(貸借対照表及び収支計算書)及び財産目録の承認
(5) 定款の変更
(6) 残余財産の処分
(7) 基本財産の処分
(8) 社会福祉充実計画の承認
(9) 事業計画及び収支予算
(10) 臨機の措置(予算外の新たな義務の負担及び権利の放棄)
(11) 公益事業・収益事業に関する重要な事項
(12) 解散

(13) その他評議員会で決議するものとして法令又はこの定款で定められた事項

(下線の項目は、租税特別措置法第40条の適用を受ける評議員会の決議とされるものです)

出典 厚生労働省通知「社会福祉法人の認可について 別紙2 社会福祉法人定款例」より


4.特別決議(3分の2以上の賛成が必要な事項)

次の事項は特別決議となり、通常の決議よりも高い賛成数が求められます。

種類内容
監事の解任評議員3分の2以上の多数
定款変更評議員3分の2以上の多数
解散評議員3分の2以上の多数
合併等(吸収・新設)評議員3分の2以上の多数
理事等の責任の一部免除評議員3分の2以上の多数
理事等の責任の全免除全評議員の同意が必要

議事録には、賛成者数・反対者数・特別決議である旨 を必ず記録します。

法人の定款例

2 前項の規定にかかわらず、次の決議は、決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。
(1) 監事の解任
(2) 定款の変更
(3) その他法令で定められた事項

出典 厚生労働省通知「社会福祉法人の認可について 別紙2 社会福祉法人定款例」より

その他法令で定められた事項の例

  • 理事、(監事)、会計監査人の解任  
  • 理事等の責任の免除 全ての免除(※総評議員の同意が必要)
  • 理事等の責任の免除 一部の免除
  • 解散の決議
  • 合併の承認


5.特別の利害関係を有する評議員は議決に参加できない

社会福祉法により、特別の利害関係を有する評議員は、その議案について議決に加われません。

▼ 特別の利害関係とは

法人に対する善管注意義務を適切に果たすことが困難な状況にあるほど、
個人的な利害関係を有する場合をいいます。

例:

  • 監事の解任議案における当該監事の親族
  • 法人との取引関係が議案に直接影響する場合
    など

▼ 実務で重要な点

議事録に次のように記録する必要があります。

  • 特別利害関係の有無を確認した旨
  • 特別利害関係がある評議員は、議決から除外した旨

特別の利害関係

「特別の利害関係」とは、評議員が、その決議について、法人に対する善管注意義務(社会福祉法第 38 条、民法第 644 条)を履行することが困難と認められる利害関係を意味するものと言われています。


6.決議の省略(みなし決議)

一般法人法 第200条(社会福祉法に準用)により、評議員会の決議を省略できる場合があります。

▼ 決議省略が成立する要件

  • 評議員 全員
    「議案に賛成する旨を書面または電磁的方法により意思表示した場合」

▼ よくあるケース

  • 感染症対策等で評議員会を開催できない場合
  • 軽微な議案で、全員一致が得られている場合

▼ 実務で必要な記録

  • 全員の書面またはメール等の同意記録
  • 議決権を有する評議員全員から提出されているかの確認
  • 同意書の原本・データの保存


7.実務でのチェックリスト

  • 定足数を満たしているか、議事録に記録しているか
  • 法令・定款に基づく決議事項が適切に議案化されているか
  • 特別決議の賛成数が基準を満たしているか
  • 特別利害関係を有する評議員を除外し、その記録を残しているか
  • 決議省略の場合、全員の同意記録が保存されているか

参考条文

評議員会の定足数及び決議に要する数

社会福祉法

(評議員会の運営)
第四十五条の九 定時評議員会は、毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。

6 評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席しその過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。

 前項の規定にかかわらず、次に掲げる評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上に当たる多数をもつて行わなければならない。
 一 第四十五条の四第一項の評議員会(監事を解任する場合に限る。)
 二 第四十五条の二十二の二において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十三条第一項の評議員会
 三 第四十五条の三十六第一項の評議員会
 四 第四十六条第一項第一号の評議員会
 五 第五十二条、第五十四条の二第一項及び第五十四条の八の評議員会

出典 社会福祉法

評議員会の決議事項

社会福祉法 

(評議員会の権限等)
第四十五条の八 評議員会は、全ての評議員で組織する。
2 評議員会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 評議員会は、第五項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する。

出典 社会福祉法

次回はこのテーマです。

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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