拠点区分間長期貸付金|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と考え方
はじめに
社会福祉法人が複数の拠点を運営している場合、
同一の事業区分内で、
拠点間の資金移動が行われることがあります。
拠点区分間長期貸付金 は、
このような拠点間の貸付のうち、
回収期限が1年を超えて到来するもの を整理するための勘定科目です。
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厚生労働省の勘定科目の説明
拠点区分間長期貸付金
出典:「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
同一事業区分内における他の拠点区分への貸付金で、
貸借対照表日の翌日から起算して入金の期限が1年を超えて到来するものをいう
この定義から分かるとおり、
拠点区分間長期貸付金は、
同一事業区分内における拠点間の内部取引 を対象とする科目です。
事業区分間貸付金との違い
拠点区分間長期貸付金と混同しやすい科目として、
事業区分間長期貸付金 があります。
両者の違いは、
貸付が行われる単位 にあります。
- 事業区分間長期貸付金
異なる事業区分間(例:社会福祉事業と公益事業)での貸付 - 拠点区分間長期貸付金
同一事業区分内の異なる拠点間での貸付
いずれも法人内部の取引ですが、
区分の誤りがあると、
決算書の構成が分かりにくくなるため、
正確な区分が求められます。
1年基準による区分
資産・負債の区分においては、
1年基準 が用いられます。
拠点区分間貸付金についても、
- 回収期限が 1年以内 のもの
→ 拠点区分間貸付金(流動資産) - 回収期限が 1年を超える もの
→ 拠点区分間長期貸付金(固定資産)
と区分されます。
また、
拠点区分間長期貸付金のうち、
決算日後1年以内に回収予定の部分 は、
1年以内回収予定拠点区分間長期貸付金 として、
流動資産に振り替えて表示します。
内部取引としての取扱い
拠点区分間長期貸付金は、
法人内部での資金の貸し借りであるため、
内部取引 に該当します。
貸付を行う拠点では
拠点区分間長期貸付金、
借入を受ける拠点では
拠点区分間長期借入金として計上されます。
決算時の内部取引消去
社会福祉法人会計基準では、
法人内部の内部取引について、
相殺消去を行うこと が定められています。
そのため、
法人全体の計算書類を作成する際には、
拠点区分間長期貸付金と、
対応する拠点区分間長期借入金は、
内部取引として相殺消去されます。
管理上の留意点
拠点区分間長期貸付金については、
- 貸付の目的が明確になっているか
- 返済計画が整理されているか
- 残高や返済状況が継続的に管理されているか
といった点を、
定期的に確認しておくことが重要です。
法人内部の取引であっても、
意思決定の過程や返済条件を整理し、
記録として残しておくことが求められます。
まとめ
拠点区分間長期貸付金は、
- 同一事業区分内の拠点間で行われる長期貸付であること
- 回収期限が1年を超えるものを対象とすること
- 法人内部の取引として決算時に相殺消去されること
- 適切な区分と管理が重要であること
これらを整理して理解しておくことで、
拠点間の資金移動を含む決算処理や監査対応を、
制度に沿って進めやすくなります。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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