社会福祉法人の積立資産の予算計上について 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士
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質問の内容
積立資産の予算を計上する場合の理事会の承認を受ける時期について、教えて下さい。 |
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予算の理事会決議について
※定款で、予算の承認については評議員会の決議を要する旨の規定をしている社会福祉法人さんは、理事会を評議員会と読み替えて下さい。
予算の承認の必要性(理事会決議の必要性)
前回は、積立金の積立ての理事会承認を受ける時期について、記載しました。
積立を行うかどうかの承認とともに、合わせて検討をしておきたいものが、積立資産を積み立てる際の予算計上についてになります。
貸借対照表で考えると以下のようになりますね。
補正予算の計上と承認
当初予算において、「○○積立資産支出」として予算に計上している場合には、予算と実際の積立資産の支出金額に大きな差額がなければ、特に問題になりません。
当初予算で積立資産支出を計上していない場合や、当初予算で計上していた積立資産支出と実際の支出額に大きな乖離がある場合には、補正予算を計上するために理事会の承認を受ける時期が問題になってきます。
補正予算の場合の理事会の開催時期について
当年度内の理事会で、補正予算の承認を受ける必要があるのか。それとも決算理事会で決算補正を行っても構わないのかという問題です。
指導監査も踏まえて考えた場合、年度内(3月末まで)に理事会の承認を受けておいた方が安全と言えるでしょう。
所轄庁から理事会の承認を受ける時期について、具体的な指示があれば、指示にしたがって手続きを行ってください。
参考として、補正予算を組む場合、当年度内の理事会の承認と決算理事会での承認とに分けて、考察してみます。
当年度内(3月まで)の理事会で補正予算の承認を受ける
毎年のように決算の時に、積立金の積立を予定(想定)している場合には、予め、当年度内の理事会で、積立資産の積立について、補正予算の承認を受けた方が、安全と言えるでしょう。
理由としましては、社会福祉法人制度改革において、理事会、評議員会の役割と手続きが明確化さている中で、
予算については、「決算補正」という文言が用いられていないことから、従前、行われてきた決算補正という手法を用いることは難しいように感じられます。
法人の経理規程を確認しましょう
社会福祉法人の経理規程の多くは、「モデル経理規程(経営協)」を基に規定されていることでしょう。
モデル経理規程の「第3章 予算」の第21条には補正予算について、規定されています。
(補正予算)
出典:モデル経理規程(経営協)より
第21条 予算執行中に、予算に変更事由が生じた場合には、理事長は補正予算を作成して理事会に提出し、その承認を得なければならない。
補正予算についての定めの中で、「予算執行中に」という表現がされています。
予算執行中とは、会計年度中(当年度中)を意味すると考えられます。
このことから、補正予算は、予算執行中である当年度中に理事会(または、定款の定めにより評議員会)で承認を得ることが前提となっていると考えられそうです。
一度、法人の経理規程の中の「補正予算」の条文を確認しておきましょう。
4月以降の理事会や決算理事会での補正予算の承認を受けることができるかどうか
実務的な観点から考えて見ますと
例えば、当年度の3月15日時点での決算の見込み金額ではなく、4月以降に確定した決算の金額で積立資産を積立てるかどうかを判断したい場合、予算の計上を当年度内に行うのは、実務上、困難であるとも考えられます。
当年度の決算の金額が確定するのは、翌年度の4月以降になりますね。
この場合には、決算理事会にて、補正予算の審議を行い承認を得ることを考えていく形になります。
ただし、指導監査も踏まえて考えると、年度内(3月末まで)に理事会の承認を受けておいた方が安全と言えるでしょう。
所轄庁から理事会の承認を受ける時期について、具体的な指示があれば、指示にしたがって手続きを行ってください。
補正予算を計上せずに積立資産支出を行う場合
ここで、積立資産を積立る金額について、予算の不足額が軽微な場合には、補正予算を計上していなくても、 問題にならないかと考えられます。
「運用上の留意事項」では、
予算の過不足額が、軽微な範囲にとどまる場合は、補正予算を組まないことも許容される旨の規定があるためです。
以下のように記されています。
2 予算と経理
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
(2)法人は、全ての収入及び支出について予算を編成し、予算に基づいて事業活動を行うこととする。
なお、年度途中で予算との乖離等が見込まれる場合は、必要な収入及び支出について補正予算を編成するものとする。ただし、乖離額等が法人の運営に支障がなく、軽微な範囲にとどまる場合は、この限りではない。
積立資産支出の金額について、予算と実績の金額の差額が軽微な場合には、補正予算を組まずに、積立資産の支出を行うことが考えられます。
軽微の判断基準
軽微かどうかの判断基準は、
厚生労働省のQ&Aでは、「一律に判断基準を示すことは 困難」と記載されていることから、
法人の収益規模や当期資金収支差額に対する割合、総資産や純資産に占める割合等により判断する形が妥当と考えられます。
実際の積立資産の支出手続き
実際の積立資産への支出手続きも年度内に行う必要があるかどうかについては
厚生労働省の通知の中では、積立金と対応する積立資産については、
「遅くとも決算理事会終了後2か月を越えないうちに行うもの」という表現が使われています。
このことから、実際の積立資産の支出手続きについては、翌年度に行うことが認められていることになります。
19 積立金と積立資産について
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
(2)積立資産の積立ての時期
積立金と積立資産の積立ては、増減差額の発生した年度の計算書類に反映させるものであるが、専用の預金口座で管理する場合は、遅くとも決算理事会終了後2か月を越えないうちに行うものとする。
補正予算について、当年度内での理事会の承認と翌年度の決算理事会等での承認に分けて、考えて見ました。
所轄庁から指導やQ&Aの発出、指導や指示にしたがうことを、第一に考えてもらった上で、当年度内(3月末まで)の理事会で補正予算の承認を組んでおいた方が安全と言えそうですね。
積立金と積立資産を一緒に考えていきますと
・積立を行うかどうかの理事会の承認手続きと、
・「(○○)積立資産支出」の予算を計上する理事会の承認手続き
という2つの手続きがあることが分かります。
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