専門的財務監査のポイント⑭ 「4 支出(2)運営費 ②人件費以外の経費 1)完了報告書内の収支決算書(運営助成金最終確定計算書)」について ~企業主導型保育事業~
企業主導型保育事業の専門的財務監査
人件費以外の経費は「証憑 → 伝票 → 元帳 → 決算 → 完了報告」が一本でつながるかが命題。
企業主導型保育事業の運営費では、人件費以外にも多くの経費(社会福祉法人会計では事業費・事務費)が発生します。
監査では、これらの経費について「正しい手続きで計上され、計算書類と完了報告書に正しく反映されているか」
を詳細に確認します。
児童育成協会が公表している専門的財務監査の評価基準のポイントを確認していきましょう。
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専門的財務監査の評価基準の内容とポイント
4 支出(2)運営費
②人件費以外の経費
1)完了報告書内の収支決算書
(運営助成金最終確定計算書)

🌟 1.人件費以外の経費に関する監査ポイント(ア)
● ア:収支決算書の経費が、帳簿・決算書と一致しているか
監査の確認ポイント
- 正規の帳簿(総勘定元帳・補助簿)と収支決算書の金額が一致しているか
- 証憑(領収書・請求書)→伝票→元帳→決算書→完了報告書の流れが一本につながっているか
- 根拠資料を提示できるか
社会福祉法人、株式会社その他の法人のチェックポイント
✔ 企業主導型保育事業の拠点ごとの計算書類と、オンライン完了報告の金額が一致しているか
(社会福祉法人は事業活動計算書・資金収支計算書との整合)
✔ 総勘定元帳と補助簿の金額が、決算書と一致しているか
✔ 伝票が証憑に基づいて正しく作成されているか
ここがズレていると、完了報告書の再提出が必要になることも多い重要項目。
🌱 2.完了報告の経費は「計算書類がベース」
児童育成協会のオンライン完了報告では、
- 事業活動計算書・損益計算書
- 資金収支計算書
- 財産目録
- 総勘定元帳
これらを基に金額を入力していきます。
完了報告の入力で大事なのは
✔ 決算書を作る前に入力するのではなく、決算書が完成した数値を正しく転記すること。
✔ 決算書と収支決算書の数字が一致していること。
🌱 3.完了報告に至るまでの“5段階の流れ”(監査はここを追う)
監査人は、次の流れが途切れず、つながっているかを確認します。
| 段階 | 会計業務 | 監査のチェックポイント |
|---|---|---|
| ① | 伝票入力 | 証憑に基づき正しく伝票が作成されているか |
| ② | 総勘定元帳・補助元帳 | 伝票の内容が正しく元帳に反映されているか |
| ③ | 決算整理 | 決算整理仕訳が適切か。 |
| ④ | 計算書類の作成 | 区分設定・内部取引消去が正しいか |
| ⑤ | 完了報告(オンライン入力) | 決算書との一致・入力誤りがないか。 対象外経費等の調整項目の入力はできているか。 |
✔ 外部委託(記帳代行)している法人ほど、⑤の入力チェックが特に重要になる。
🌱 4.対象外経費(マイナス調整)の代表例
運営助成金では、次のような費用が対象外となり、完了報告書で「マイナス調整」する必要があります。
● 対象外経費の例
- 職員慰安旅行費
- 会議・研修のうち保育に直接関連しない部分
- 非資金支出(減価償却費・賞与引当金繰入など)
- 実費徴収収入に対応する支出
- 保護者徴収の主食・副食費に対応する材料費
- 施設外活動費(協会が示す対象外例に該当するもの)
🌱 5.対象外経費の“プラス調整”(費用に加算)
● 調整の例
- 人件費等の積立資産の積立額
- 前期賞与引当金を取り崩して支給した賞与
つまり、補助金対象となる実際の支出額に合わせて調整する作業 が必須ということやねん。
🌟 6.まとめ:経費は “証憑 → 元帳 → 決算 → 完了報告” の一貫性が鍵
人件費以外の経費に関する監査の要点は次のとおり。
✔ 収支決算書の経費が帳簿と一致している
✔ 証憑 → 伝票 → 元帳 → 決算書 → 完了報告の流れが一本化
✔ 対象外経費は必ず調整(マイナス or プラス)
✔ 会計ソフトでの区分設定が正しい
✔ 伝票と証憑が適切に保管されている
これらが整っていれば、人件費以外の経費の監査はスムーズに通ります。
(参考)専門的財務監査の評価基準と社会福祉法人のポイント解説
専門的財務監査の評価基準と項目ごとの社会福祉法人のポイントを掲載しています。
| 区分 | 監査事項 | 評価事項 | 社会福祉法人のポイント |
|---|---|---|---|
| ア | 収支決算書(運営助成金最終確定計算書)の人件費以外の経費については 正規の帳簿及び損益計算書をベースに計上されていることを決算書、総勘定元帳や補助簿等と照合を行い確かめる。 | ・計上額の根拠帳簿や明細を示すことができない。 | ○法人の計算書類(決算書)と収支計算書(報告金額)の整合性が取れているか (企業主導型保育事業(拠点)の事業活動計算書や資金収支計算書を基に、収支決算書がオンライン入力できているか。) ○計算書類は、総勘定元帳や補助簿と整合性が取れているか。 |
| アの続き | ・計上額の説明や根拠資料に不十分な面がある。 | ○総勘定元帳、補助簿の基になる振替伝票は、証憑書類その他の書類から正しく作成されているか |
企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度
下のリンクから指摘事項のページに進みます。
企業主導型保育事業に関する4コマ漫画
「まんがの部屋」コーナーでは、内容ごとに4コマ漫画で説明しています。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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