1. HOME
  2. ブログ
  3. 企業主導型保育事業 専門的財務監査
  4. 専門的財務監査のポイント⑰ 「4 支出 ⑶親族、役員や関係会社等との取引」について ~企業主導型保育事業~

会計・法人運営の記事ブログ

会計・法人運営を支えるブログ

企業主導型保育事業 専門的財務監査

専門的財務監査のポイント⑰ 「4 支出 ⑶親族、役員や関係会社等との取引」について ~企業主導型保育事業~

この記事の目次

企業主導型保育事業の専門的財務監査

■ 親族・役員・関係会社との取引は「誤解を招きやすい」ため最重要監査項目

企業主導型保育事業における親族・役員・関係会社との取引(関連当事者取引) は、透明性・公正性が求められます。

専門的財務監査では次の流れに基づき、その取引が妥当か/不公正ではないか を丁寧に検証します。

児童育成協会が公表している専門的財務監査の評価基準のポイントを確認していきましょう。

🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui


本のご案内バナー 書籍版1から学べる社会福祉法人会計 全11巻をなのなのながご紹介

有料動画のご案内バナー 社会福祉法人の全体像を10分で学べるシリーズ なのなのながご紹介


専門的財務監査の評価基準の内容とポイントの4コマ漫画
4 支出(3)親族、役員や関係会社等との取引

企業主導型保育事業の専門的財務監査の評価基準のうち関連会社との取引について説明する4コマ漫画

🌟 1.関連当事者取引の監査ポイント(ア〜オ)


● ア:取引の“合理的必要性”が説明できるか

監査で確認される内容

  • なぜ「第三者」でなく、親族・役員・関係会社を選んだのか
  • 保育事業の遂行上、必要性があるか
  • 代替可能な方法がなかったのか

NGとなりやすい例

  • 「昔から依頼しているから」
  • 「関係会社なので安くしてくれている」
  • 必要性が文書化されていない

対応策

  • 委託理由を会議録や稟議書に記録
  • 業務範囲を明確に定義
  • 必要性の根拠を説明できる状態に整える

● イ:承認手続き・契約書の整備が適切か

監査では次を確認します。

✔ 理事会の承認があるか

(特に高額・継続的な契約は必須)

✔ 稟議書・決裁文書が整備されているか

(専決ではなく、規程どおりに承認されているか)

✔ 契約書が締結され、内容が妥当か

  • 業務内容
  • 契約期間
  • 契約金額
  • 役割分担
  • 不適合責任

NG例

  • 契約書が存在しない
  • 契約内容が曖昧
  • 保育所側に不利/関係会社に有利な契約内容

● ウ(1):業務内容と対価(金額)が妥当か

監査の視点

  • そのサービスを保育施設が実際に受けているか
  • 計算明細(内訳)と契約内容が一致しているか
  • 他の業者と比較して“相場から不当に高くないか”
  • 共通経費(法人全体の費用)を按分する場合、按分基準は妥当か

共通経費按分の具体例

  • 本部人件費
  • 本部家賃
  • システム費
  • 清掃・警備などの共通契約

チェックポイント

  • 按分基準が明確か(面積・職員数・時間等)
  • 按分の根拠資料が残っているか
  • 拠点間での不公平がないか

● ウ(2):役員との貸付・借入が適正か

関連当事者からの借入や、逆に貸付がある場合は契約書の有無・条件の公正性 が監査で確認されます。

チェックされる内容

  • 契約書があるか
  • 金利・返済条件が一般の金融機関と比較して妥当か
  • 利息の扱いが適切か
  • 貸付・借入が事業運営上不可欠だったか
  • 返済状況に滞りがないか

● エ:関係会社に運営を委託している場合は要注意

保育所の「運営」を委託する場合は、業務委託の中でも最も慎重な審議が必要になります。

監査で確認される内容

  • 理事会議事録(慎重な審議が行われているか)
  • 契約書の内容
  • 契約金額の算定根拠
  • 他の委託事例と比較した妥当性
  • 役割分担(労務・会計・責任の所在)

実務上のポイント

  • 理事会決議は必須
  • 契約前に所轄庁へ相談するのが安全
  • 事業実態と契約内容の不一致は指摘の対象

● オ:法人税の修正申告等があった場合の確認

法人本部で税務申告の修正があった場合、その原因が保育施設に関係するものであれば監査では内容確認が行われます。

チェック事項

  • 修正申告・更正通知があるか
  • 内容が保育施設に関連していないか
  • 不適切な取引がその後修正されているか

🌱 2.関連当事者取引で“特に重要な3つのポイント”

監査人が特に注目する部分は次の3つです。

✔ ① 必要性が説明できるか

(第三者でなく関係会社を選んだ理由)

✔ ② 契約が適正か

(内容・期間・金額・責任の所在)

✔ ③ 金額が妥当か

(相場比較・見積書・計算明細)

これら3つが揃っていないと、「不公正な取引」「不適切な関連当事者取引」 と判断され、重大指摘になることが多い分野です。


🌱 3.借入・貸付取引の注意事項(まとめ)

  • 契約書は必須
  • 金利・条件が公正
  • 返済能力と返済実績を確認
  • 保育事業の資金繰りに影響がないか
  • 関係会社とのお金の流れはすべて説明できるように整理

🌟 4.まとめ:関連当事者取引は「透明性 × 公正性 × 根拠資料」が鍵

親族・役員・関係会社との取引に関する監査では、次が重要となります。

その取引に合理的必要性がある

契約書・稟議書・議事録など承認手続きが整備されている

契約内容・金額が妥当で、不公正ではない

実際に物品の納品・サービスの提供を受けている証跡がある

按分基準が説明でき、根拠資料が残っている

貸付・借入は条件が公正で、返済状況も明確

これらが揃っていることは、関連当事者との取引についての監査の対応として大切になります。

(参考)専門的財務監査の評価基準と社会福祉法人のポイント解説

専門的財務監査の評価基準と項目ごとの社会福祉法人のポイントを掲載しています。

NO.監査事項評価事項社会福祉法人のポイント
第三者ではなく、親族、役員や関係者等と取引を行う場合は、

それが保育事業遂行上、合理的必要性があるか質問や関係資料等の閲覧等によって確かめる。
・その取引に保育事業遂行上の合理的必要性がない。または、乏しい。業務委託の理由(必要性)を説明できるようにしておく
人件費やその他経費全般について、

親族、役員や関係会社(親族や役員が経営する会社を含む)との取引がないか質問を行い、

その承認手続きや取引条件や価格等が不公正なものでないか契約書等を閲覧して検証する。
・承認手続きが行われていない。

・承認手続きに不十分な面がある。

・契約書が存在しない。

・契約書の内容が不十分な面がある。
○業務委託の内容について、理事会その他の必要な承認が得られているか、議事録・稟議書で確認する

○委託先との契約書の締結と保管状況の確認

○契約書の記載内容に不備がないか確認する(他の業務委託契約書の記載内容も参考にする)

(1)
特に親会社、その他関係会社等との

コンサルタントフィー、マネジメントフィーや
共通経費の保育施設への按分負荷額については

契約書や請求書等でその中身を検証し、

保育施設が実際にサービスの提供を受けているか計算明細書等を閲覧して金額等の妥当性を検証する。

・実際にサービスを受けていることを確認できる資料がない。

・説明や根拠資料に不十分な面がある。


○委託業務の執行状況を確認する。

○契約書や請求書・計算書の内容を確認する。

○他の拠点と共通する業務委託費の場合には、共通経費の按分基準を確認する
ウ(2)役員と資金の貸付、借入取引がある場合は、

貸付・借入契約書の存在を確認し、返済条件等が公正に定められていることを検証する。
・契約書がなく、取引条件が公正でない。また、公正であることを十分に説明できない。 ○借入・貸付時に契約を締結している確認する

○借入・貸付の条件は、妥当な条件となっているか確認する(金融機関との借入条件などとも比較してみる)

関係会社に対して保育事業の運営を委託している場合は、

「4⑵②3)運営委託費・その他業務委託費全般(コンサルタント契約等)」の手続を実施すると同時に

他の契約者との取引条件と比較して妥当であることを示す記録が残されているか確かめる。
・他の契約者との取引条件と比較して妥当であることを示す記録が残されていない。

・その内容が他の契約者との取引条件と比較して妥当でない。(例:特に委託先にとって有利な取引条件になっている等)
○運営委託費の金額の算出根拠資料の確認

○他の事例等で契約金額の合理性を確認した資料を準備しておく
法人本部において、法人税申告書の修正申告や更生の通知があったかを質問し、

その内容が保育施設に関連する場合には、その内容を吟味し、その後、不適切な取引が修正されているか確かめる。
・必要な修正がなされていない。○修正申告や更生の有無や内容を確認する

企業主導型保育事業者向けサービス

①規程の販売

(1)経理規程案の説明書(企業主導型保育事業用・株式会社その他の法人向け)

企業主導型保育園の経理規程の説明書、サンプル画像1ページ

PDFファイル 47ページ(A3サイズ)

価格 税抜35,000円

経理規程案の説明書のご案内を見る

(2)経理規程・関連規程

発注規程
企業主導型保育事業の発注規程
積立資産管理規程
企業主導型保育事業の積立資産管理規程
助成金取扱規程
企業主導型保育事業の助成金取扱規程
寄附金関係書類
企業主導型保育事業の寄附金関係書類

②会計・財務コンサルティングサービス


企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度

下のリンクから指摘事項のページに進みます。

専門的財務監査専門的労務監査立入調査午睡時抜き打ち調査
4年度4年度4年度4年度
5年度5年度5年度5年度
6年度6年度6年度6年度

企業主導型保育事業に関する4コマ漫画

「まんがの部屋」コーナーでは、内容ごとに4コマ漫画で説明しています。

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

ホームページの各記事や事務所サービスのご案内

よく読まれている人気の記事(カテゴリー別)


マツオカ会計事務所作成の書籍・動画・規程

20年間の社会福祉法人・福祉事業者の支援と、11年間の地方公務員の行政事務で培ったノウハウを 書籍・動画・規程 として公開しています。
ご自身で学び、法人内で活かせるコンテンツをご用意していますので、ぜひご覧ください。

▶ マツオカ会計事務所が提供する書籍・動画・規程まとめページを見る

出版中の書籍


本のご紹介 1から学べる社会福祉法人会計の執筆者 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士 松岡洋史の写真

社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍のご案内

Amazonのページはこちら(試し読み機能あり)

Amazonの試し読み機能で、本の一部ご覧いただくことができます。

  1. 資金収支計算書 (第5版) 58ページ 1870円
  2. 事業活動計算書(第3版) 73ページ 1925円
  3. 貸借対照表 (第3版) 81ページ 1980円
  4. 経営組織(理事・監事や理事会・評議員会について) 57ページ 1760円
  5. 随意契約 45ページ 1650円
  6. 注記と附属明細書 109ページ 1980円
  7. 社会福祉法人会計簿記の特徴 52ページ 1870円
  8. 社会福祉法人会計基準の逐条解説 83ページ 1980円
  9. 利益と増減差額 ~その違いからわかること~ 47ページ 1815円
  10. 現金主義と発生主義、実現主義 67ページ 1980円
  11. 社会福祉法人の減価償却 58ページ 1870円

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

関連記事


福祉の現場を知る会計士だからこそ
誰にも真似できない実務支援を

企業主導型保育園の経理規程案の説明書の紹介画像6ページ分を記載

有料動画のご案内・社会福祉法人会計
補助金審査員経験者が伝える補助金採択されたいならこれをみて!基本編

使命を守るための戦略シリーズ(大人気シリーズ)

使命を守るための戦略シリーズ 第1回なぜ今戦略が必要とされているのか
有料動画講座 受講者の声まとめページ|補助金・会計・研修の感想を紹介
書籍型1から学べる社会福祉法人会計を説明している画像

現在の顧問公認会計士・税理士との契約はそのままに

福祉の会計・監査の対応に安心を

error: Content is protected !!