1. HOME
  2. ブログ
  3. 企業主導型保育事業 専門的財務監査
  4. 専門的財務監査のポイント⑱ 「4 支出 ⑷本社費等」について ~企業主導型保育事業~

会計・法人運営の記事ブログ

会計・法人運営を支えるブログ

企業主導型保育事業 専門的財務監査

専門的財務監査のポイント⑱ 「4 支出 ⑷本社費等」について ~企業主導型保育事業~

企業主導型保育事業の専門的財務監査

令和3年度から、企業主導型保育事業に対して専門的財務監査が行われています。
専門的財務監査は、監査法人(公認会計士等)によって行われることになります。

児童育成協会が公表している専門的財務監査の評価基準のポイントを確認していきましょう。

今回は、4 支出(4)本社費等です。

本社費は、社会福祉法人の場合には、本部経費と考えると分かりやすいでしょう。

専門的財務監査の評価基準の内容とポイント
4 支出(4)本社経費等

専門的財務監査の評価基準の内容の横に、ポイントとなるところを記載していきます。

NO. 監査事項 評価事項 社会福祉法人のポイント
収支計算書に本社費等(総務・経理のための人件費、法人の賃借物件の保育施設占有部分の賃借料相当額等)の社内振替費用が計上されているかどうかを確認し、
計上されている場合は当該振替費用の算定(按分)基準が策定され適切に承認されていることを確認する。

*直接賦課できない間接共通経費については、園児数、従業員数、面積など按分すべき経費の発生原因となる事象を適切に反映する按分基準
・本社費算定(按分)基準が明確に作成され承認されていない。

・按分方法が実態を反映したものになっていない。

・毎期、按分方法が変更され、按分額に恣意性がある。
○共通経費の配分基準を定めている。

○配分基準の根拠を確認する。

○配分基準の変更の有無を確認する。

○使用する配分比率を定期的に確認しているか。
本社費等として施設から徴収されている金額が施設運営のために必要となる合理的な費目及びその内容から算定されていることを確認する。

*本社費等の中に役員報酬、交際費その他助成金の支払い対象経費として認められていない内容が含まれていないか注意する。
・費目及びその内容が合理的ではない。○保育事業へ按分(配賦)している本部経費の内容を確認する。

○保育事業へ按分した本部経費に対象外経費が含まれているかどうか確認する。
本社費等の金額は、実際に本社等で発生している費用額に基づいて算定されていることを確認する。・本社で実際に発生している費用であることを資料をもって十分に説明できない。○本部経費の取引の証憑書類を確認する
(契約書や請求書、領収書その他)
本社費等が他の通常の費用科目に含まれて計上されていないかどうか質問を行い、含まれているとの回答を得た場合*には、該当する項目に対して上記アイウの手続を実施する。

*本社費等がないと回答を得た場合であっても、費用科目の総勘定元帳を通査し該当取引の有無を確認する。
○本部経費を按分している勘定科目を把握しておく。

本部経費(共通経費)の配分基準(按分基準)

共通経費(共通支出及び共通費用)の配分

社会福祉法人会計では、複数の事業や拠点、サービスに共通して発生する費用については、合理的な配分基準(按分基準)を設定し、適切に配分(按分)をおこなっていきます。

社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて

7 共通支出及び共通費用の配分について(会計基準省令第 14 条第2項、第 20 条第2項関係)

資金収支計算及び事業活動計算を行うに当たって、人件費、水道光熱費、減価償却費等、事業区分又は拠点区分又はサービス区分に共通する支出及び費用については、合理的な基準に基づいて配分することになるが、

その配分基準は、支出及び費用の項目ごとに、その発生に最も密接に関連する量的基準(例えば、人数、時間、面積等による基準、又はこれらの2つ以上の要素を合わせた複合基準)を選択して適用する

一度選択した配分基準は、状況の変化等により当該基準を適用することが不合理であると認められるようになった場合を除き、継続的に適用するものとする。

なお、共通する収入及び収益がある場合には、同様の取扱いをするものとする。

社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について

13 共通支出及び費用の配分方法

(1)配分方法について
共通支出及び費用の具体的な科目及び配分方法は別添1のとおりとするが、これによりがたい場合は、実態に即した合理的な配分方法によることとして差し支えない。
また、科目が別添1に示すものにない場合は、適宜、類似の科目の考え方を基に配分して差し支えない。
なお、どのような配分方法を用いたか分かるように記録しておくことが必要である。

(2)事務費と事業費の科目の取扱について
「水道光熱費(支出)」、「燃料費(支出)」、「賃借料(支出)」、「保険料(支出)」については原則、事業費(支出)のみに計上できる。ただし、措置費、保育所運営費の弾力運用が認められないケースでは、事業費(支出)、事務費(支出)双方に計上するものとする。

社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について

採用する配分基準

いったん採用した配分基準については、正当な理由なく、みだりに変更することはできません。

配分基準を決定する場合には、法人内部の規程にしたがって、適正な承認を受けましょう。

配分比率の定期的な確認

配分基準で用いる配分比率については、定期的に確認を行い、現状(実態)を反映した比率となっているか確認をしましょう。

(確認時期の例)毎年度、年度当初に確認と改定を行い、当年度について当該比率を用いる

配分基準及び配分比率の手続きの流れ

共通経費の把握
本部経費等の共通経費の有無や内容を確認する
配分基準の検討・決定
共通経費の取引の内容を基に、適切な配分基準を検討し、決定する
配分比率の決定
配分基準で使用する配分比率を計算する
配分基準及びの承認
決定した配分基準及び配分比率について、法人内部での承認を受ける(稟議書等の記録を残す)
配分の計算・仕訳
発生した費用について、配分比率を基に、配分を行う
配分比率の確認
使用する配分比率について、実態を反映するように定期的に確認、改定を行う。

本部経費(共通経費)の配分と対象外経費

共通経費の配分は全社的(全法人的)に行うことから、企業主導型保育事業の拠点へ、対象外経費となる費用が配分されることも考えられます。

企業主導型保育事業へ、共通経費の配分により対象外経費が配分される場合には、

完了報告において「調整金額」欄を用いて、マイナスの調整を行うとよいでしょう。

(調整の例)福利厚生費に共通経費として配分した110,000円が対象外経費である場合

科目損益計算書金額調整金額金額
福利厚生費320,000-110,000210,000

調整金額の入力

企業主導型保育事業の運営費の完了報告では、調整金額の入力が必要になります。

社会福祉法人会計において適正に計上された内容、取引であっても

企業主導型保育事業の運営費の助成の対象とならない費用などがありますので、注意が必要です。

調整金額は、費用にマイナスする調整と、プラスする調整があります。

マイナスの例

  • 対象外経費(職員の慰安旅行費など)
  • 非資金支出の取引(減価償却費、賞与引当金繰入など)
  • 実費徴収した収入を基に支出した費用

プラスの例

  • 人件費積立資産の積立金額
  • 前期の賞与引当金を取崩して支給した賞与支出


企業主導型保育事業

専門的財務監査の対応支援をオンラインで

専門的財務監査の解説記事の一覧はこちら


本のご案内 1から学べる社会福祉法人会計

社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍

本の内容をブログ記事でご紹介しています

事務所スタッフによる本の感想です。(本のタイトルまたは画像をクリックして下さい)

(第4巻 経営組織は、法人の役員(理事、監事)や評議員について解説しています)

オンライン研修会「1から学べる社会福祉法人会計勉強会」のスタッフの感想は、こちら

Amazonのページはこちら(試し読み機能あり)

Amazonの試し読み機能をぜひご活用ください。本の内容を一部ご覧いただくことができます。

第1巻
資金収支計算書

第1巻 資金収支計算書 表紙

63ページ
1870円

NO.タイトルページ価格
第1巻資金収支計算書 (第5版)581870円
第2巻事業活動計算書(第3版)731925円
第3巻貸借対照表 (第3版)811980円
第4巻経営組織(理事・監事や理事会・評議員会について)571760円
第5巻随意契約 451650円
第6巻注記と附属明細書1091980円
第7巻社会福祉法人会計簿記の特徴
『大切なのは、1行増えること』
521870円
第8巻管理職のための
社会福祉法人会計基準の逐条解説
831980円
第9巻利益と増減差額
 ~その違いからわかること~
471815円

(第4巻 経営組織は、法人の理事・監事や評議員について解説しています)

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。



代表挨拶へ

Profile Picture

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

関連記事


1から学べる社会福祉法人会計 第9巻 利益と増減差額

マツオカ会計事務所のストーリー
こちら