評議員の選任手続きの確認② 「評議員になることができない者の確認手続き」 指導監査の準備として
社会福祉法人の評議員の改選期
令和3年度は、ほとんどの社会福祉法人で評議員の改選期でした。次回の改選期は、令和7年度となる法人が多いでしょう。次回の改選期までに、評議員の辞任や退任により新たな評議員を選任する必要がある法人もあると思います。
評議員の選任について正しい手続きを行い、記録がきちんと残されているか、今年度以降の指導監査に向けて準備をしていきましょう。
評議員になることができない者について
評議員になることができない者については、社会福祉法と社会福祉法人審査基準の中で規定がされています。
評議員になることができない者は、
NO. | 評議員になることができない者 |
---|---|
① | 欠格事由に該当する者 |
② | 法人の役員や職員 |
③ | 法人の役員や職員と特殊関係にある者 |
が挙げられます。
社会福祉法及び社会福祉法施行規則の規定
社会福祉法では、評議員になることができない者について以下のように定められています。
欠格事由
社会福祉法による評議員の欠格事由は下のようになります。
NO. | 欠格事由 |
---|---|
① | 法人 |
② | 精神の機能の障害により職務を適正に執行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者 |
③ | 生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又はこの法律の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者 |
④ | ③のほか、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者 |
⑤ | 所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた法人の解散当時の役員 |
⑥ | 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 |
法人の役員や職員
法人の役員や職員は、評議員になることができません。
役員及び評議員と特殊関係にある者の範囲
役員及び評議員と特殊関係にある者の範囲については、社会福祉法施行規則で以下のように定められています。
NO. | 特殊関係にある者 |
---|---|
① | 配偶者 |
② | 三親等以内の親族 |
③ | 厚生労働省令で定める者(規則第2条の10) (1)当該評議員又は役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者 (2)当該評議員又は役員の使用人 (3)当該評議員又は役員から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者 (4)(2)又は(3)の配偶者 (5)(1)~(3)の三親等以内の親族であって、これらの者と生計を一にするもの (6)当該評議員又は役員が役員(注)若しくは業務を執行する社員である他の同一の社会福祉法人以外の 団体の役員、業務を執行する社員又は職員(同一の団体の役員等が当該社会福祉法人の評議員の総数の3分の1を超える場合に 限る。)(注)法人ではない団体で代表者又は管理人の定めがある場合には、その代表者又は管理人を含む。 (7)他の社会福祉法人の役員又は職員(当該他の社会福祉法人の評議員となっている当該社会福祉法人の評議員及び役員の合計数が、 当該他の社会福祉法人の評議員の総数の半数を超える場合に限る。) (8)次の団体の職員(国会議員又は地方議会の議員を除く。)(同一の団体の職員が当該社会福祉法人の評議員の総数の3分の1を超える 場合に限る。) ・ 国の機関、地方公共団体、独立行政法人、国立大学法人、大学共同利用機関法人、地方独立行政法人、特殊法人、認可法人 |
(注意)租税特別措置法第40条の適用を受ける場合の特殊関係者の範囲について
社会福祉法人が受贈法人として、租税特別措置法第40 条第1項の適用を受けようとする場合には、
特殊関係者の範囲について、定款に「租税特別措置法施行令第 25条の 17 第6項第1号で定める親族等特殊関係者に関する規定」が規定されている必要があります。
社会福祉法と租税特別措置法施行令では、特殊関係者の範囲が同一ではありませんので、ご注意ください。
社会福祉法及び社会福祉法施行規則
社会福祉法及び社会福祉法施行規則の条文を参考に記載していきます。
社会福祉法
(評議員の資格等)
第四十条 次に掲げる者は、評議員となることができない。
一 法人
二 心身の故障のため職務を適正に執行することができない者として厚生労働省令で定めるもの
三 生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又はこの法律の規定に違反して刑に処せられ、
その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
四 前号に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることが
なくなるまでの者
五 第五十六条第八項の規定による所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた社会福祉法人の解散当時の役員
六 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する
暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなつた日から五年を経過しな
い者(第百二十八条第一号ニ及び第三号において「暴力団員等」という。)2 評議員は、役員又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができない。
3 評議員の数は、定款で定めた理事の員数を超える数でなければならない。
4 評議員のうちには、各評議員について、その配偶者又は三親等以内の親族その他各評議員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれることになつてはならない。
5 評議員のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等以内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれることになつてはならない。
社会福祉法より
社会福祉法施行規則
(評議員のうちの各評議員と特殊の関係がある者)
社会福祉法施行規則より
第二条の七 法第四十条第四項に規定する各評議員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者は、次に掲げる者とする。
一 当該評議員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
二 当該評議員の使用人
三 当該評議員から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持している者
四 前二号に掲げる者の配偶者
五 第一号から第三号までに掲げる者の三親等以内の親族であつて、これらの者と生計を一にするもの
六 当該評議員が役員(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものにあつては、その代表者又は
管理人。以下この号及び次号において同じ。)若しくは業務を執行する社員である他の同一の団体(社会
福祉法人を除く。)の役員、業務を執行する社員又は職員(当該評議員及び当該他の同一の団体の役員、
業務を執行する社員又は職員である当該社会福祉法人の評議員の合計数の当該社会福祉法人の評議員の総
数のうちに占める割合が、三分の一を超える場合に限る。)
七 他の社会福祉法人の役員又は職員(当該他の社会福祉法人の評議員となつている当該社会福祉法人の評
議員及び役員の合計数が、当該他の社会福祉法人の評議員の総数の半数を超える場合に限る。)
八 次に掲げる団体の職員のうち国会議員又は地方公共団体の議会の議員でない者(当該団体の職員(国会
議員又は地方公共団体の議会の議員である者を除く。)である当該社会福祉法人の評議員の総数の当該社
会福祉法人の評議員の総数のうちに占める割合が、三分の一を超える場合に限る。)
イ 国の機関
ロ 地方公共団体
ハ 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人
ニ 国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人又は同条第三項
に規定する大学共同利用機関法人
ホ 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人
ヘ 特殊法人(特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人であつて、総務省設置法(平成
十一年法律第九十一号)第四条第一項第九号の規定の適用を受けるものをいう。)又は認可法人(特別
の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政官庁の認可を要する法人をいう。)
(評議員のうちの各役員と特殊の関係がある者)
社会福祉法施行規則より
第二条の八 法第四十条第五項に規定する各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者は、次に掲げる者とする。
一 当該役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
二 当該役員の使用人
三 当該役員から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持している者
四 前二号に掲げる者の配偶者
五 第一号から第三号までに掲げる者の三親等以内の親族であつて、これらの者と生計を一にするもの
六 当該役員が役員(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものにあつては、その代表者又は管理
人。以下この号及び次号において同じ。)若しくは業務を執行する社員である他の同一の団体(社会福祉法
人を除く。)の役員、業務を執行する社員又は職員(当該他の同一の団体の役員、業務を執行する社員又は
職員である当該社会福祉法人の評議員の総数の当該社会福祉法人の評議員の総数のうちに占める割合が、三
分の一を超える場合に限る。)
七 他の社会福祉法人の役員又は職員(当該他の社会福祉法人の評議員となつている当該社会福祉法人の評議
員及び役員の合計数が、当該他の社会福祉法人の評議員の総数の半数を超える場合に限る。)
(参考)特殊関係者と役員及び評議員の関係図
特殊関係者を役員(理事、監事)及び評議員に選任できるかどうかについて、関係図をまとめてみました。
NO. | 役職名 | 選任の可否 |
---|---|---|
① | 理事 | 可(ただし、理事総数の3分の1 かつ 3人以内) |
② | 監事 | 不可 |
③ | 評議員 | 不可 |
社会福祉法人審査基準による規定
社会福祉法及び社会福祉法施行規則の他に、社会福祉法人の審査基準の中にも評議員となることができない者について以下のように規定がされています。
関係行政庁の職員
一般の社会福祉法人が、関係行政庁の職員を評議員に選任することについては、差し控えるようにと示されています。
社会福祉協議会の場合には、関係行政庁の職員は、評議員の総数の5分の1の範囲までは評議員になることができるとされています。
第3 法人の組織運営
出典 社会福祉法人 審査基準より
1 役員等
(1) 関係行政庁の職員が法人の評議員又は役員となることは法第61条に規定する公私分離の原則に照らし適当でないので、差し控えること。ただし、社会福祉協議会にあっては、評議員又は役員の総数の5分の1の範囲内で関係行政庁の職員が、その評議員又は役員となっても差し支えないこと。
名目的、慣例的な評議員の選任
名目的、慣例的に評議員を選任することも適当でないとされています。
評議員の重要な役割から、評議員に選任しても実際に評議員会に参加しない、できない者を評議員に選任することは適当ではないとされています。
(3) 実際に法人運営に参画できない者を、評議員又は役員として名目的に選任することは適当でないこと。
(4) 地方公共団体の長等特定の公職にある者が慣例的に、理事長に就任したり、評議員又は役員として参加したりすることは適当でないこと。
出典 社会福祉法人審査基準より
(6) 暴力団員等の反社会的勢力の者は、評議員又は役員となることはできないこと。
出典 社会福祉法人審査基準より
評議員の選任・解任委員会での確認の手続き
評議員の候補者が、上記の評議員になることができない者(欠格事由や法人の役職員や役員及び評議員と特殊関係)に該当しないことを、
選任の手続きの中できちんと確認を行ったことの記録が大切になります。
具体的には、
・評議員の候補者から履歴書や誓約書などの提出を受けて、
・選任・解任委員会の場で説明・報告し、議事録に記録していくことになります。
履歴書において、
職歴(在職状況)など、欠格事由に該当していないことを確認しておきましょう。
誓約書において、
「欠格事由に該当しないこと」、
「役員・評議員と特殊関係にないこと」
を候補者ご自身に誓約してもらっておきましょう。
評議員選任・解任委員会の議事録には、
評議員候補者が「欠格事由や特殊関係に該当しないこと」
を確認した旨の説明が行われていることが、記録されているか
評議員選任・解任委員会の議事録、評議員(候補者)の履歴書と誓約書を、一度、確認してみましょう。
履歴書・誓約書について
履歴書、誓約書は、新任となる評議員さんだけでなく、再任された評議員さんを含め、委員会において選任する全ての評議員(候補者)さんのものが必要になります。
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次回はこのテーマです。
- 評議員の選任手続きの確認③ 「評議員の資格要件の確認手続き」
- 法人運営・指導監査の準備の記事の一覧はこちら
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