貯蔵品|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と実務の考え方
はじめに
貯蔵品は、社会福祉法人の会計において
棚卸資産に分類される勘定科目のひとつです。
日常業務では、
消耗品としてその都度使われていくものが多いため、
費用としての意識が先に立ちやすい一方で、
決算時には在庫としての整理が求められます。
貯蔵品の考え方を整理しておくことで、
日常の管理と決算処理を無理なくつなげることができます。
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厚生労働省の勘定科目の説明
貯蔵品
消耗品等で未使用の物品をいう。
業種の特性に応じ小区分を設けることができる。出典
「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
貯蔵品は、
すでに購入しているが、まだ使用されていない消耗品を表します。
棚卸資産としての位置づけ
貯蔵品は、次の科目とあわせて
棚卸資産として整理されます。
- 医薬品
- 診療・療養費等材料
- 給食用材料
- 商品・製品
- 仕掛品
- 原材料
いずれも共通して、
決算日時点で法人が保有している在庫を対象としています。
棚卸資産では、
数量だけでなく、
その時点で使用可能な状態にあるかどうかも重要な確認ポイントになります。
貯蔵品の対象となる物品
貯蔵品には、
事業運営上、日常的に使用される消耗品が含まれます。
たとえば、
- おむつ、マスク、手袋などの介護・衛生用品
- 事務用品
- 切手や印紙
など、
一定量をまとめて購入し、
順次使用していく物品が該当します。
会計処理の考え方
消耗品を購入した際、
購入時点ですべてを費用として処理するのではなく、
決算日時点で未使用の分は貯蔵品として資産に計上します。
その年度に使用した分のみを費用とし、
未使用分は翌年度以降、
実際に使用した年度の費用として計上していくことになります。
この考え方により、
各年度の費用と事業実態を適切に対応させることができます。
例外的な処理:重要性の原則
社会福祉法人会計では、貯蔵品のうち、重要性が乏しいものがについては、貯蔵品として計上せずに、買入れ時や払出し時に費用とすること認められています。他の棚卸資産についても同様です。
1 重要性の原則の適用について(会計基準省令第2条第1項第4号関係)
重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。
(1)消耗品、貯蔵品等のうち、重要性が乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができる。
厚生労働省:「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の
取扱いについて」より
実務で押さえておきたいポイント
貯蔵品を適切に管理するためには、
- どれだけ購入したか
- どれだけ使用したか
- 決算日時点でどれだけ残っているか
を、
帳簿や管理資料で把握できる状態にしておくことが重要です。
また、
貯蔵品として計上できるのは
使用可能な状態にある物品に限られます。
使用期限が過ぎているものや、
劣化等により使用できなくなったものは、
在庫とはいえず、適切な処理が必要になります。
棚卸しとの関係
決算時には、
帳簿上の数量と実際の在庫数量が一致しているかを確認するため、
棚卸しを行います。
貯蔵品についても、
書類上の管理と実物の確認を行い、
差異がないかを確認することが求められます。
まとめ
貯蔵品は、
社会福祉法人会計における棚卸資産の中でも、
比較的身近で件数の多い科目です。
- 未使用の消耗品であること
- 決算日時点の在庫を資産として計上すること
- 使用可能な状態かどうかを確認すること
これらの基本を押さえておくことで、
日常業務から決算・監査まで、
実務を安定して進めやすくなります。

記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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