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社会福祉法人会計と制度の質問と回答

積立金の積立の理事会承認を受ける時期について 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士

「ホームページ利用上のご注意について」をお読み頂き、これらの条件にご同意の上ご利用ください。
顧問先様からのメールでのご相談の中で、他の顧問先様にもご参考になりそうな内容を、ホームページでご案内しています。

質問の内容

積立金の積立てに関して理事会を開催して承認を受ける時期を教えて下さい。

関連するページは下のようになります。

NO.記事のタイトル
社会福祉法人の積立金と積立資産の取扱い(原則的な取扱い)
社会福祉法人の積立金と積立資産の取扱い(例外的な取扱い・積立資産のみの計上) 
積立金の積立ての理事会承認を受ける時期について
積立資産の予算計上について
積立資産の専用口座への資金移動の時期
有料動画 「積立金と積立資産の関係の確認」 約17分 税込み1,100円 
 

🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui


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1.はじめに

積立金は、社会福祉法人会計において重要な位置づけを持つ項目です。
しかし実務では、次のようなご相談が非常に多くあります。

  • 積立金の承認は年度内に必要?
  • 決算理事会で承認してもよい?
  • 監事監査や会計監査との関係は?

この記事では、会計基準と通知の内容を踏まえながら、
積立金を積み立てる際の「理事会承認の時期」について、分かりやすく整理します。

上記に記載の関連ページ(原則・例外・積立資産の予算など)とセットで読むと、より理解が深まります。


2.積立金は「理事会決議」が必ず必要

社会福祉法人会計基準では、積立金について次のように定められています。

理事会の議決に基づき、当期末繰越活動増減差額から積み立てる。

したがって、積立金を計上する場合は、
次の2点を必ず理事会で承認する必要があります。

NO承認内容
将来の特定の目的(積立目的)
当期末繰越活動増減差額の範囲で積み立てること

積立目的の明確化と、余剰の範囲内の積立てが大前提です。


3.理事会承認の時期:基本は「年度内」が望ましい

積立金は、次の決算書に反映されます。

  • 事業活動計算書:繰越活動増減差額の部
  • 貸借対照表:純資産の部(その他積立金)

この点から、
積立金の承認は、当該年度内の理事会で行うことが望ましい
と言えます。

会計年度:令和7年度(令和7年4月〜令和8年3月)

👉 承認が望ましい時期

  • 令和8年3月までの理事会(年度内)

年度内に承認しておくことで、監事監査・会計監査においても、
「決算書(計算書類)に反映される積立金が、適切な手続に基づいて承認されている」
と説明できます。


4.年度内に承認した方がよい理由

年度内承認が望ましい理由は次のとおりです。

✔ 決算書に反映されるため

積立金は決算書に計上されます。
年度内に承認しておくことで、
決算書の数値と理事会議事録の整合性が明確になります。

✔ 監事監査・会計監査の流れに合致

監事監査は通常、決算理事会より前に実施されます。
年度内に積立金が承認されている方が、監査手続としても自然です。

決算理事会の承認となると、監事監査時には未承認の積立を監査していることにつながります。

✔ 決算理事会で否決された場合のリスク

もし決算理事会で積立金が否決されると、
すでに決算書に計上されている積立金を修正する必要が生じ、不適切です。


5.決算理事会で承認したい場合(所轄庁に要相談)

実務では、

  • 決算数値が確定しないと積立金額が判断できない
  • 事業の状況により、年度内に承認が難しい

といった理由から、
決算理事会で承認するケースが生じることもあります。

また、会計基準の運用上の留意事項では、
積立資産の資金移動について、

専用口座の場合は、決算理事会終了後2か月以内に行うものとする

とされており、
積立資産の資金移動の手続には翌年度の実施も許容されています。

そのため、
過去には法人によっては決算理事会で承認する運用も見られました。

ただし、この取扱いは指導監査で指摘を受ける可能性があります。
決算理事会での承認は問題ないか、事前に所轄庁へ確認し、指示にしたがいましょう。


6.積立金の承認が翌年度になる場合の注意点

翌年度に承認する場合は、次の点に注意が必要です。

  • 所轄庁へ確認しておく(最も重要)
  • 監事監査・会計監査との整合性を確保する
  • 積立資産支出の予算(補正予算)措置が必要か確認する(下記7)
  • 手続きの記録を文書化しておく

特に会計監査人の監査のある法人では、会計監査人に相談の上で
承認時期と積立手続の関係を整理しておく必要があります。


7.積立金と積立資産の「予算」の整理も忘れずに

積立金の承認とは別に、
積立資産支出の予算(当初予算または補正予算)の計上も必要になります。

  • 当初予算に積立資産支出がある → そのまま実施可能
  • 当初予算にない → 補正予算が必要
  • 大きな乖離がある → 補正予算を検討

積立金の議決だけでは不十分で、
予算手続きも並行して確認することが重要です。


8.まとめ

積立金の理事会承認のタイミングについて、ポイントは次のとおりです。

✔ 基本は年度内承認(決算書・監査との整合のため)

✔ 決算理事会で承認したい場合には、所轄庁の判断に従うことが最も重要

✔ 会計監査人を設置する法人は、会計監査人とも要相談

✔ 積立資産支出の予算手続きもセットで整理する

積立金は、法人の財務運営に大きく関わるため、
承認の時期を丁寧に整理して進めることが大切です。


9.ご相談ください

積立金の承認時期や、積立資産支出の予算の扱いは、
法人の規模や会計処理の状況によって判断が異なるケースがあります。

  • 積立金の承認時期の判断
  • 予算手続きの整合
  • 理事会説明資料の作成
  • 所轄庁への事前相談の進め方

など、状況に応じたサポートが可能です。

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(参考)積立金に関する社会福祉法人会計基準の内容の確認

積立金に関して、会計基準では以下のように規定されています。

社会福祉法人会計基準

第6条(純資産)
3 その他の積立金には、将来の特定の目的の費用又は損失の発生に備えるため、 社会福祉法人が理事会の議決に基づき事業活動計算書の当期末繰越活動増減差額から積立金として積み立てた額を計上するものとする。

社会福祉法人会計基準

社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について

19 積立金と積立資産について
(2)積立資産の積立ての時期

積立金と積立資産の積立ては、増減差額の発生した年度の計算書類に反映させるものであるが、専用の預金口座で管理する場合は、遅くとも決算理事会終了後2か月を越えないうちに行うものとする。

厚生労働省「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」


勘定科目の解説

勘定科目の解説のページでは、科目の内容を説明しています。

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記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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