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評議員の資格要件|社会福祉法に基づく「識見」の考え方と実務での確認ポイント(選任・解任委員会手続きと履歴書)

はじめに

社会福祉法人の評議員は、
法人の重要事項を決定する機関(評議員会)を構成する役員です。

そのため、評議員として選任される者には、
社会福祉法が定める 「必要な識見」 を備えていることが求められます。

また、選任の過程については、

  • 定款に基づく選任手続きが適切に行われたか
  • 資格要件の確認が記録に残されているか
    が、指導監査でも必ず確認されます。

本記事では、評議員に必要な「識見」とは何か、
そして選任時に何を整えるべきかについて、
実務の視点からわかりやすく解説します。


本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って実務で起こりやすい論点を解説しています。

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1.社会福祉法が求める「評議員の資格要件」

評議員の資格について、社会福祉法 第39条は次のように定めています。

評議員は、社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから、定款の定めるところにより選任する。

ここから読み取れるポイントは次の2つです。

No求められる要件
適正な運営に必要な識見を有する者 であること
定款に定める手続きにより選任 されること

どちらも評議員の選任に必須の条件であり、
いずれも選任手続きの中で確認・記録しておく必要があります。


2.「識見を有する者」とはどういう人か

社会福祉法は「識見」の具体的内容を細かく規定していませんが、審査要領などから、次のような観点が重要とされています。

▼ 評議員に求められる識見の例

  • 法人の目的や社会福祉事業への理解
  • 組織運営や地域福祉に関する知識や経験
  • 公的な視点から法人の意思決定に参加できる判断力
  • 経営・財務・地域活動などに関する見識や実務経験

▼ 実務上重要なポイント

「識見があるかどうか」ではなく、
選任時にその確認がきちんと行われ、記録されているかどうかが問われます。

3 法人の組織運営
(1) 「社会福祉事業について識見を有する者」は、例えば、次のような者が該当すること。
ア 社会福祉に関する教育を行う者
イ 社会福祉に関する研究を行う者
ウ 社会福祉事業又は社会福祉関係の行政に従事した経験を有する者
エ 公認会計士、税理士、弁護士等、社会福祉事業の経営を行う上で必要かつ有益な専門知識を有する者

出典:厚生労働省「社会福祉法人審査要領」より

3.定款に基づく選任手続きが必要(選任・解任委員会)

ほとんどの法人では定款に「評議員選任・解任委員会」 を設置する旨が定められています。

▼ 評議員選任・解任委員会で行うべき内容

  • 評議員候補者の経歴・識見の確認
  • 評議員として適任である理由の説明
  • 適切に選任したことを議事録として記録

✔ この委員会の議事録が、監査でも必ず確認される重要書類になります。

○ 指導監査を行うに当たっては、評議員が「社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者」として選任された者であること、及び法令又は定款に定められた方法によりその選任が行われていることを確認する。
この評議員の資格については、「社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者」として法人において適正な手続により選任されている限り、制限を受けるものではない。そのため、指導監査を行うに当たっては、監査担当者の主観的な判断で、必要な識見を有していない等の指摘を行うことや、識見を有する者であることの証明を求めることがないよう留意する必要がある。

法人における評議員の選任の手続においては、評議員候補者が「社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者」である旨を説明することが必要である。

出典:厚生労働省「指導監査ガイドライン」より


4.履歴書で確認すべき項目

評議員候補者の履歴書には、
「識見」を判断するための情報が含まれている必要があります。

▼ 例

  • 社会福祉法人・社会福祉協議会等での活動実績
  • 地域福祉・行政関連の活動経験
  • 経営・財務・事業運営の経験
  • 資格・技能・地域活動歴 など

履歴書を見れば、なぜその人が評議員として適任なのか説明できる状態にしておくことが大切です。


5.議事録で必ず押さえるポイント

評議員選任・解任委員会の議事録には、次を明記します。

  • 候補者が「識見を有する者」である理由
  • 履歴書等に基づき適任と判断した旨
  • 委員会として選任が妥当と判断したこと

これらが記録されていれば、後日指導監査や所轄庁から確認を受けても説明できます。

※ 新任だけでなく、再任の評議員も全員分の履歴書が必要です。


6.実務での確認ステップ(チェックリスト)

  • 履歴書で「識見」が確認できるか
  • 定款に基づき、選任・解任委員会を開催しているか
  • 議事録に「識見の確認」が記録されているか
  • 新任・再任を問わず、全員分の履歴書がそろっているか
  • 選任理由を説明できる状態になっているか

参考条文

評議員の選任

(評議員の選任)
第三十九条 評議員は、社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから、定款の定めるところにより、選任する。

出典 社会福祉法より

次回はこのテーマです。

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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