未収収益|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と実務の考え方
はじめに
未収収益は、社会福祉法人の会計では
それほど頻繁に登場する科目ではありません。
その一方で、
内容を正しく理解していないと、
「事業未収金」や「未収金」と混同しやすい科目でもあります。
未収収益は、
契約に基づき、時間の経過に応じて提供される役務に対する対価で、
まだ入金されていないものを整理するための勘定科目です。
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厚生労働省の勘定科目の説明
未収収益
一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、
すでに提供した役務に対して、いまだその対価の支払を受けていないものをいう。出典
「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
未収収益
この定義のポイントは、
「一定の契約」「継続して」「役務の提供」「時間の経過」
という点にあります。
未収収益が発生する代表的なケース
未収収益は、
法人の本来の福祉事業から生じるものではなく、
付随的・周辺的な契約から発生することが一般的です。
たとえば、
- 法人が保有する不動産の賃貸料(家賃)
- 月極駐車場の使用料
- 保険料
- ソフトウェア利用料などの継続課金
これらはいずれも、
一定期間の経過に応じて役務が提供される契約
という点が共通しています。
当月分の対価を、
翌月以降に受け取る場合に、
未収収益として計上されます。
事業未収金との違い
未収収益と事業未収金は、
一見すると似た科目に見えることがあります。
どちらも
「○月分の対価を翌月以降に受け取る」
という点では共通しているためです。
しかし、会計上の考え方は異なります。
事業未収金
- 福祉サービスの提供に対する対価
- 実際に行われたサービスの成果に基づく収益
- 時間の経過に比例して提供されるものではない
未収収益
- 契約に基づき、時間の経過に応じて提供される役務
- 一定期間が経過することで収益が発生する
- 家賃や月極料金のような性質
同じ「継続的なサービス」に見えても、
時間の経過そのものが収益発生の基準になるかどうか
が、区分の大きな判断ポイントになります。
実務で判断に迷いやすい点
社会福祉法人の福祉サービスの中には、
居室の提供など、
一見すると時間の経過に比例しているように見えるものもあります。
しかし、
福祉サービス全体として捉える場合には、
事業活動の一部としての収益と考えられるため、
原則として事業未収金に区分されます。
個別の契約内容だけでなく、
法人の事業としての位置づけを踏まえて判断することが大切です。
現場でよく見かける状況
月次資料を確認していると、
未収収益が前月からそのまま残っていることがあります。
金額はそれほど大きくなくても、
契約内容や期間が整理されていないと、
確認に時間がかかることがあります。
一方で、
契約書と紐づけて管理されている法人では、
月次や決算の確認が落ち着いて進み、
担当者さんの負担も小さい印象があります。
経過勘定としての位置づけ
未収収益は、
- 前受収益
- 前払費用
- 未払費用
とあわせて、
経過勘定と呼ばれることがあります。
いずれも、
時間の経過に関連して収益や費用を調整するための科目
という点が共通しています。
まとめ
未収収益は、
社会福祉法人では発生頻度は高くないものの、
理解しておかないと判断に迷いやすい科目です。
- 契約に基づく継続的な役務かどうか
- 時間の経過が収益発生の基準になっているか
- 事業収益に該当するかどうか
これらを整理して考えることで、
未収金や事業未収金との区分も明確になり、
実務が落ち着いて進めやすくなります。
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記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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