専門的財務監査のポイント② 「2(1)会計責任者の任命」について ~企業主導型保育事業~
企業主導型保育事業の専門的財務監査
企業主導型保育事業では、令和3年度から公認会計士等による「専門的財務監査」が行われています。
今回のテーマは、「会計責任者と出納職員の任命」について。
組織としてお金を正しく扱うための、いわば「内部牽制の基礎」です。
児童育成協会が公表している専門的財務監査の評価基準のポイントを確認していきましょう。
🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
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専門的財務監査の評価基準の内容とポイントの4コマ漫画
2 会計一般(1)会計責任者の任命 について

🌟 1.評価基準はここを見ています
評価基準では、ア〜イの2つの観点で確認されます。
● ア:会計責任者・出納職員を任命しているか
内部牽制(チェックし合う仕組み)が機能するようになっているか を見る項目です。
評価事項の例:
- 会計責任者と出納職員が同じ人になっている
- 異動で不在期間が生じている
- 辞令が残っていない
→ 監査では、辞令(控)の有無、発令日、空席期間を細かく確認されます。
社会福祉法人の注意ポイント
- 会計責任者・出納職員は 経理規程で定義される役職
- 保育事業(拠点)にも同様に配置が必要
- 人事異動で空席が出やすいため要チェック
● イ:通帳と銀行印を別の者が管理しているか
預金通帳と銀行印は「セットで持つと危険」です。
評価事項の例:
- 同じ人が両方保管している
- 保管場所が不適切(鍵なし・共用棚など)
→ 不正防止・盗難防止の観点から、別の人・別の場所で管理が原則です。
🌱 2.アの例:会計責任者と出納職員の配置イメージ
会計責任者と出納職員は、法人の規模や組織により異なります。
一例としては次のような配置が典型的です。
| 役職名 | 職名 | 氏名 |
|---|---|---|
| 会計責任者 | 園長 | ○○ |
| 出納責任者(出納職員) | 総務課職員 | □□ |
会計責任者と出納職員は別々で、同じ人が兼任しないことが大切です。
● チェックしておきたい3つの点
- 誰が会計責任者なのか整理されているか
- 空白期間がないか(異動時に発生しがち)
- 辞令は残っているか(監査は書類で確認します)
企業主導型保育の拠点についても、
法人のどこが責任者か明確にしておく必要があります。
🌱 3.イの例:通帳と銀行印の分離管理
監査では、保管者と保管場所がどのようになっているかを確認します。
| 区分 | 保管(担当)者 | 保管場所 |
|---|---|---|
| 預金通帳 | 総務課職員(□□) | 総務課金庫 |
| 銀行印 | 園長(○○) | 法人(施設)金庫 |
● なぜ別々に保管するのか?
通帳と銀行印を1人で持つと
- 不正出金
- 盗難
- 誤処理
などのリスクが高まります。
監査・指導監査の両方で強く見られるポイントであり、「複数人による相互チェック」 が原則です。
🌟 4.実務の現場でよくある誤解
❌「1人で通帳も銀行印も持っていた方が手続きが早いし便利では?」
→ 一見ラクですが、管理としては最も危険な状態 です。
法人のお金は、スピードよりも“安全・適切・透明”が優先される
という考え方が基本になります。
🌱 5.まとめ:会計責任者と出納職員は“形だけ”では不十分
企業主導型保育事業では、内部牽制が弱いと監査指摘につながりやすく、また不正リスクも高まります。
特に以下は、早めに確認しておきたいポイントです。
- 会計責任者・出納職員が明確か
- 異動で空白期間が生じていないか
- 辞令(控)が整っているか
- 通帳と銀行印は別々の者・別々の場所で管理しているか
保育事業に限らず、法人全体で見直すと、指導監査(社会福祉法人)の準備にもつながります。
(参考)専門的財務監査の評価基準と社会福祉法人のポイント解説
専門的財務監査の評価基準と項目ごとの社会福祉法人のポイントを掲載しています。
| 区分 | 監査事項 | 評価事項 | 社会福祉法人のポイント |
|---|---|---|---|
| ア | 事業所ごとに会計責任者及び出納職員を任命するなど、内部牽制組織体制が確立されているか検証する。 | ・別々の者が任命されていないなど、内部牽制組織体制が確立されていない。 | ○辞令(控え)の有無を確認する。 ○異動により空席になっていないか、発令日など確認する。 ○保育事業(拠点)に係る会計責任者、出納職員を確認する。 |
| イ | 預金通帳、銀行印等は別々の者が管理し、保管場所も適切か。 | ・別々の者が保管しておらず、保管場所等も盗難等の危険性があるなど、適切でない。 | ○通帳と銀行印を、別々に保管と管理することが大切になってきます。 ○出金の手続きなどを複数の者に相互チェックをした上で、行わせるためです。 |
企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度
下のリンクから指摘事項のページに進みます。
企業主導型保育事業に関する4コマ漫画
「まんがの部屋」コーナーでは、内容ごとに4コマ漫画で説明しています。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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