専門的財務監査のポイント④ 「2(3)帳簿の整備」について ~企業主導型保育事業~
企業主導型保育事業の専門的財務監査
企業主導型保育事業の専門的財務監査では、帳簿の整備状況 が非常に重視されます。
今回は、評価基準の中の会計一般(3)帳簿の整備について、監査がどこを見るのか、実務上の注意点まで含めて整理します。
児童育成協会が公表している専門的財務監査の評価基準のポイントを確認していきましょう。
🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui
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専門的財務監査の評価基準の内容とポイントの4コマ漫画
2 会計一般(3)帳簿の整備 について

🌟 1.帳簿整備に関する監査ポイント(ア〜ウ)
● ア:主要簿・補助簿が適切に作成されているか
監査で見られる内容
- 会計帳簿が作成されていない
- 作成されているが、記入が不十分・不整合がある
社会福祉法人、株式会社その他の法人のポイント
- 経理規程第12条(前後)に定められた帳簿が整っているか
- 拠点区分ごとに帳簿を作成しているか(企業主導型保育の拠点を含む)
✔ 経理規程に定めている帳簿は、 “作成義務”があるため、省略はできません。経理規程を見直し、精査しましょう。
● イ:会計伝票に必要な項目が正しく記載されているか
監査で見られる内容
- 勘定科目・取引日・金額・数量が未記載
- 取引内容や相手先が分からない
- 承認印(またはサイン)がない
社会福祉法人、株式会社その他の法人のポイント
- 会計伝票が適切に作成され、綴じられているか
- 記入漏れがないか(監査では伝票1枚ずつ見ることもあります)
● ウ:証憑(請求書・領収書等)が伝票と整合し保管されているか
監査で見られる内容
- 証憑が紛失している
- 証憑と伝票の紐づけが不十分
- 金額・日付の不一致
社会福祉法人、株式会社その他の法人のポイント
- 伝票番号ごとに証憑がすぐ取り出せるよう綴じているか
- 証憑がバラバラになっていないか
- 会計記録との対応関係が明確か
専門的財務監査・指導監査(社会福祉法人)のどちらでも指摘されやすい部分です。
🌱 2.アの解説:主要簿・補助簿を適切に整備する
多くの企業主導型保育園では、厚生労働省などが示す モデル経理規程(経営協) を採用しており、規程では会計帳簿として次が定められています。
【モデル経理規程(例)】
- 主要簿
・仕訳日記帳
・総勘定元帳 - 補助簿
・勘定科目の内訳を明らかにするための帳簿
(例)
現金出納帳
預金出納帳
固定資産管理台帳
借入金台帳
未収金台帳
立替金台帳
未払金台帳 - その他の帳簿
・会計伝票
・月次試算表
・予算管理表
さらに、帳簿は拠点区分ごとに作成することが規定されています。
つまり、
企業主導型保育の拠点についても、法人全体と同じ帳簿を作成する必要があります。
● 補助簿も「取引がゼロでも作成が必要」
例えば
- 借入金台帳
- 立替金台帳
などがこれに当たります。
✔ 該当取引がゼロでも、経理規程に定めている「補助簿の様式は作成し綴じておく」ことが監査の視点です。
🌱 3.イの解説:会計伝票の記載と承認
モデル経理規程では、会計伝票に次の記載が必須とされています。
【会計伝票に記載する内容】
- サービス区分
- 勘定科目
- 取引年月日
- 数量
- 金額
- 相手方
- 取引内容
- 会計責任者の承認(印またはサイン)
✔ この記載漏れは、専門的財務監査の現場でもよく出る指摘事項です。
会計伝票は、証憑を添付し、適切に綴じる必要があります。
🌱 4.ウの解説:証憑の保管方法
会計記録の根拠となる
・請求書
・領収書
などは、会計伝票と結びつくよう整理しておく必要があります。
● よくある監査の場面
監査人:「伝票番号NO.01の請求書を見せてください」
このとき、すぐに取り出せる状態か が重要です。
✔ 見つからない
✔ 関連性が不明
✔ 別の場所に散らばっている
こうした状態は、監査での指摘につながります。
🧡 補足:証憑(しょうひょう)とは?
会計処理の根拠となる書類の総称で、
- 請求書
- 領収書
- 契約書
などを指します。
会計監査の業界では、「証憑書類(しょうひょうしょるい)を見せてください」
という言い方をすることも多いので、覚えておくと便利です。
🌱 5.まとめ:帳簿・伝票・証憑は「3点セット」で管理
帳簿に関する監査ポイントは、次の3つに集約されます。
✔ 経理規程どおりの会計帳簿を作っているか
✔ 会計伝票が正しく記載・承認されているか
✔ 証憑が伝票と対応する形で適切に保管されているか
これらは、保育事業に限らず、法人全体の指導監査の準備にも直結する重要な項目です。
(参考)専門的財務監査の評価基準と社会福祉法人のポイント解説
専門的財務監査の評価基準と項目ごとの社会福祉法人のポイントを掲載しています。
| 区分 | 監査事項 | 評価事項 | 社会福祉法人のポイント |
|---|---|---|---|
| ア | 主要簿、補助簿等は適切に作成されているか。 | ・作成されていない。 ・作成されているが、内容等に不備がある。 | ○経理規程第12条(前後)に定める会計帳簿が作成されているか |
| イ | 会計伝票には、勘定科目、取引年月日、数量、金額、相手方、取引内容が適切に記入されているか | ・適切に記載されていない。 | ○会計伝票が作成されており、適切な承認の上で綴じられているか。 |
| ウ | 収入、支出に伴う証拠書類(請求書、領収書等)については、会計伝票との整合性が図られる形で適切に添付、保管されているか。 | ・適切に添付、保管されていない。 | ○請求書・領収書が綴りなどに綴じられており、会計伝票に関連する請求書などがすぐに取り出せる状態にあるか。 |
企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度
下のリンクから指摘事項のページに進みます。
企業主導型保育事業に関する4コマ漫画
「まんがの部屋」コーナーでは、内容ごとに4コマ漫画で説明しています。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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