専門的財務監査のポイント⑯ 「4 支出(2)運営費 ②人件費以外の経費 3)運営委託費運営委託費・その他業務委託費全般(コンサルタント契約等)」について ~企業主導型保育事業~
企業主導型保育事業の専門的財務監査
■ 業務委託費は「必要性 × 契約 × 金額 × 承認」の4点セットで確認される
企業主導型保育事業では、保育施設の運営を外部に委託したり、清掃・給食・コンサルティング・事務代行などを業務委託するケースがあります。
業務委託は不適切な支出につながりやすいため、専門的財務監査では手続きの流れを重点的に確認します。
児童育成協会が公表している専門的財務監査の評価基準のポイントを確認していきましょう。
今回は、4 支出(2)運営費 ②人件費以外の経費 3)運営委託費・その他業務委託費全般(コンサルタント契約等)になります。
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専門的財務監査の評価基準の内容とポイントの4コマ漫画
4 支出(2)運営費
②人件費以外の経費
3)運営委託費(運営委託する事業者に限る)

🌟 1.業務委託の監査ポイント(ア〜エ)
● ア:業務委託の“合理的必要性”が説明できるか
監査で確認される点
- なぜ外部委託が必要なのか
- 委託内容が保育事業の遂行上必要か
- 代替可能な内部対応がなかったか
よくある NG
- 「前からお願いしているから」という理由だけ
- 内部で対応可能なのに外部委託している
- 必要性が文書化されていない
対応ポイント
- 委託理由を文書で整理(効率化、人員不足、専門性など)
- 理事会資料や会議録に記録を残す
- 委託業務の範囲を明確にする
● イ:業務委託契約書が作成・保管され、内容が妥当か
監査の確認内容
- 契約書を締結しているか(契約書なしは即指摘)
- 契約内容(期間・金額・業務範囲・契約不適合責任など)が十分か
- 他事業者との相場と比較して妥当な金額か
- 委託先に過度に有利な条件になっていないか
対応ポイント
- 契約書を必ず作成(電子契約でも可)
- 保育施設控としてコピーを保管
- 他社比較(相見積もり)や相場資料を残しておく
- 契約根拠(背景資料)を残すと説明が容易
● ウ:毎月の委託費請求について“内容の検証”が行われているか
監査で確認される点
- 委託先からの請求書に明細が付いているか
- その明細が業務内容と合致しているか
- 請求内容を園長・管理者が毎月確認しているか
- 会計伝票の承認者は誰か
対応ポイント
- 毎月の請求書に対して「業務内容チェック」まで実施
- 明細書や内部のチェック表を残す
- 承認手続き(稟議・押印)を規程通りに行う
● エ:委託費の金額が妥当であると説明できるか
監査の視点
- 他の保育施設の類似契約と比較して妥当か
- 契約金額の算出根拠(見積書・積算書)があるか
- 不合理に高額な契約になっていないか
対応ポイント
- 見積書の比較(相見積もり)
- 他施設の委託費との比較資料
- 金額算定の根拠資料(積算表・稟議書)を整備
🌱 2.業務委託に関連する“内部統制”のポイント
業務委託は、契約 → 業務 → 請求 → 支払 が連動しているため、
内部統制(チェックの仕組み)が整っているかを確認されます。
✔ 契約書の原本・コピーが保育事業の控として整理されている
✔ 月次請求ごとに業務内容・金額の確認が行われている
✔ 委託内容の見直し(定期評価)が行われている
🌱 3.運営委託契約(運営そのものを外部委託するケース)
保育施設の運営そのものを外部に委託する場合、これは 法人の重要な業務執行 にあたるため、
通常の業務委託より厳しいルールが必要になります。
✔ 理事会決議など適切な承認手続きが必須
(理事長、代表取締役の専決は、決裁権限(専決の範囲)を定めた規程の内容、金額以外では不可の可能性が高い)
✔ 所轄庁へ事前相談が望ましい(社会福祉法人の場合)
(社会福祉法人の場合、自治体によっては指導監査で指摘を受けることも想定しておく)
✔ 契約内容の慎重な審議
- 運営権の範囲
- 任せる業務と責任
- 情報管理・個人情報
- 労務管理は誰が担うのか
✔ 議事録の整備
監査では議事録を必ず確認し、「慎重な審議を経た形跡」があるかまで見られます。
🌱 4.業務委託全般のチェックリスト(実務で必須)
- 契約書の有無
- 契約内容(業務・金額・期間)の明確性
- 契約金額の根拠資料
- 稟議書・決裁の有無
- 契約に至るプロセスの妥当性(必要性の説明)
- 毎月の請求内容の確認記録
- 内部監査・理事会報告などの見直し手続き
- 委託先の選定理由(価格以外の要因)
🌟 5.まとめ:業務委託費は「合理性・契約・金額・承認」が一本で説明できるかが鍵
業務委託費に関する監査では、次の点が重要です。
✔ 委託の必要性を説明できる
✔ 契約内容と請求内容が一致
✔ 契約金額の算定根拠がある
✔ 月次の請求内容の確認・承認ができている
✔ 運営委託では理事会決議、取締役会決議など適切な承認が必須
これらがそろっていることが、業務委託費に関する監査で大切になります。
(参考)専門的財務監査の評価基準と社会福祉法人のポイント解説
専門的財務監査の評価基準と項目ごとの社会福祉法人のポイントを掲載しています。
専門的財務監査の評価基準の内容の横に、ポイントとなるところを記載していきます。
| NO. | 監査事項 | 評価事項 | 社会福祉法人のポイント |
|---|---|---|---|
| ア | 保育施設の運営やその他の業務を外部に委託している場合は、 まず、その委託が保育事業遂行上、合理的必要性があるか、質問や関係資料等の閲覧等によって確かめる。 | ・その委託に保育事業遂行上の合理的必要性がない。または、乏しい。 | ○業務委託の理由(必要性)を説明できるようにしておく |
| イ | 業務委託契約書が必ず作成されているか確かめる。また、その内容が他の契約者との取引条件と比較して妥当であるか確かめる。 | ・外部に運営委託やその他の業務委託を行っているが、契約書を作成していない。 ・その内容が他の契約者との取引条件と比較して妥当でない。 (例:特に委託先にとって有利な取引条件になっている等) ・契約内容が不十分で不備がある。 | ○委託先との契約書の締結と保管状況の確認 ○業務委託の内容について、理事会等の承認が得られているか、議事録で確認する |
| ウ | 運営委託先との契約書を閲覧し、また毎月の運営費請求に対して明細表が作成され、その内容について社内で検証、承認しているか確かめる。 | ・契約書内の運営委託内容、金額等について、社内で十分検討し、承認している形跡がない。 | ○業務委託の内容について、理事会等の承認が得られているか、議事録で確認する ○毎月の運営費の請求に対して明細表があり、内容の精査、確認が行われている |
| エ | 運営委託費の内容及び金額が、同規模の他の保育施設の運営費と比較して妥当であるか検証する。 | 運営委託費金額が合理的な理由がなく適正な金額でない。 | ○運営委託費の金額の算出根拠資料の確認 ○他の事例等で契約金額の合理性を確認した資料を準備しておく |
企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度
下のリンクから指摘事項のページに進みます。
企業主導型保育事業に関する4コマ漫画
「まんがの部屋」コーナーでは、内容ごとに4コマ漫画で説明しています。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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