令和5年度 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の会計処理②|計上時期・計上金額の考え方(障がい福祉サービス)
はじめに(本記事の位置づけ)
本記事は、令和5年度に実施された「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」のうち、
障がい福祉サービス分について、交付金の計上時期および計上金額の考え方を整理したものです。
本交付金は、賃金改善の実施時期と交付金の支払時期が一致しない制度設計となっており、
決算期(令和5年度)をまたぐ2月分・3月分の取扱いが、実務上の検討事項となりました。
勘定科目の考え方については、前回の記事
「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の会計処理①|勘定科目の考え方(障がい福祉サービス)」
をご参照ください。
なお、同趣旨の支援は令和7年度にも予定されていますが、本記事は令和5年度の実績整理としてお読みください。最新年度の情報については、制度公表後に別途整理する予定です。
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1.交付金の申請と支払の流れ
厚生労働省のリーフレットによると、本交付金は次の流れで支給されます。
- 事業者が都道府県に対して交付金の申請を行う
- 都道府県において申請内容を確認
- 交付額が確定した後、交付金が支払われる
このように、賃金改善の実施 → 交付額確定 → 支払という流れになるため、
会計上は発生主義・現金主義の整理が必要になります。
2.交付金が支払われる時期
リーフレットおよびQ&Aによると、交付金の支払は、
申請後、交付額が確定した後に行われるとされています。
また、厚生労働省から都道府県に対しては、
できるだけ早期に支払うよう依頼がなされています。
令和5年度決算との関係では、特に次の月分が検討対象となります。
- 令和6年2月分
- 令和6年3月分
(※4月分以降についても、基本的な考え方は同様です。)
3.交付金の計上金額の考え方
3-1.交付金額が確定する時期
交付金の金額は、次の算式により計算されます。
福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の金額
= 月ごとの障害福祉サービス等報酬(請求額) × サービス区分ごとの交付率
この算式から、
障害福祉サービス等報酬の金額が確定した後に、交付金額が確定する
仕組みであることが分かります。
国保連からの通知時期を踏まえると、
報酬額の確定は、サービス提供月の翌々月の上旬から下旬頃と考えられます
(※あくまで実務上の想定であり、確定時期を断定するものではありません)。
この前提に基づくと、交付金額の確定時期の目安は次のとおりです。
- 令和6年2月分 → 令和6年4月頃
- 令和6年3月分 → 令和6年5月頃
4.発生主義による交付金の計上
4-1.基本的な整理
発生主義により、賃金改善を行った月と同じ期間に交付金収益を認識する場合には、
令和6年2月分・3月分の交付金を、未収補助金(未収交付金)として、
令和5年度の決算に計上することになります。
この場合、決算作業の時期と交付金額の確定時期が重なるため、
計上金額の見積りには注意が必要です。
4-2.「見込額」と「実際の交付額」の違い
厚生労働省のQ&Aでは、次の点が示されています。
- 改善計画書に記載する
「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の見込額」
は、実際に交付される金額ではありません。 - 実際の交付額は、
月ごとの確定した障害福祉サービス等報酬に交付率を乗じた金額です。
したがって、発生主義で計上する場合であっても、
× 見込額
○ 確定した障害福祉サービス等報酬 × 交付率
という整理が基本となります。
4-3.過誤調整があった場合
国保連請求において、過誤調整等が行われた場合には、
それに伴い、交付金の算定基礎となる報酬額も変動します。
この場合には、
交付金の計上額についても修正が必要となります。
Q&Aでも、過誤調整後の金額に基づいて整理する旨が示されています。
5.現金主義による交付金の計上
一方、現金主義により、交付金の支払を受けた時点で収益を認識する場合には、
確定した交付金額に基づいて収益を計上することになります。
この方法では、
- 未収交付金の計上
- 見積額の検討
といった論点は生じません。
社会福祉法人会計では、決算においては原則として発生主義が求められますが、
重要性の乏しい取引については、簡便な方法(現金主義)を採用することも認められています。
6.まとめ(計上時期・計上金額の整理)
発生主義による整理
- 交付金額
= 月ごとの障害福祉サービス等報酬(請求額) × サービス区分ごとの交付率 - 過誤調整等があった場合には、計上額を修正
- 令和6年2月分・3月分は、未収交付金として令和5年度決算に計上する可能性あり
現金主義による整理
- 交付金の支払を受けた時点で収益計上
- 金額は、確定した交付金額を用いる
福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の会計処理については、
厚生労働省および所轄庁から示される通知・指示を優先してください。
令和5年度決算においては、
2月分・3月分をどのように整理するかが実務上の検討事項となるケースが多く、
法人の実情を踏まえながら、顧問先様と相談して進めていくことが重要になります。
関連記事
| ① | 令和5年度 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の会計処理①|勘定科目の考え方 |
| ② | 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の会計処理②|計上時期・計上金額の考え方 |
| 参考 | ICT導入支援事業補助金の勘定科目や会計処理について |
| 参考 | 介護ロボット導入活用支援事業補助金の会計処理について |
(参考)厚生労働省のリーフレット・通知
交付金の手続き
事業者は、都道府県に対して交付金の申請を行い、都道府県から交付金の支払い(交付)を受けるとされています。

交付金が支払われる時期

交付金の計上金額
交付金の金額と確定する時期
交付金の金額は、下のように、総報酬に交付率を乗じる形で計算されることになります。

交付金の支払金額:厚生労働省のQ&A 問26
発生主義によって収益として交付金を計上する場合の、交付金の金額について、厚生労働省のQ&Aの中に押さえておきたい質問として問26があります。
(引用元 厚生労働省 令和6年2月からの福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金介護職員処遇改善支援補助金に関するQ&A(令和5年2月8日)版より)

| × | 改善計画書の「①福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の見込額」欄の金額 |
| ○ | 月ごとの確定した障害福祉サービス等報酬に交付率を乗じたもの |
サービスごとの交付率
(引用元 厚生労働省ホームページ「概要 令和6年2月からの福祉・介護職員処遇改善 臨時特例交付金について」より)

障害福祉サービス等報酬の請求月に、発生主義により交付金計上を計上する場合の金額は、以下のように計算していくことになりそうです。
| 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の金額 = 月ごとの障害福祉サービス等報酬(請求額) × サービス区分ごとの交付率 |
過誤調整:厚生労働省のQ&A 問25
国保連請求額の確定(決定通知)までに、過誤調整等が行われていますね。この場合の取扱いについても、厚生労働省のQ&Aで示されています。

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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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