専門的財務監査のポイント㉛ 対象外経費の例 ~企業主導型保育事業~
企業主導型保育事業の専門的財務監査
令和3年度から、企業主導型保育事業に対して専門的財務監査が行われています。
専門的財務監査は、監査法人(公認会計士等)によって行われることになります。
今回は、、専門的財務監査において指摘が多い、対象外経費を確認していきます。
「ホームページのご利用上の注意」をお読み下さり、ご了承の上、お読みください。
対象となる経費↔対象外経費のポイント
対象外経費を確認する上では、助成金の対象となる経費を確認することが大切です。
助成金の対象となる経費に該当しない経費は、対象外経費と考えることができます。
NO. | 助成金の対象となる経費のポイント |
---|---|
① | 当年度に支出した経費 |
② | 現金支出を伴う経費 |
③ | 保育サービス提供のために要した経費 |
④ | 助成金を原資とする経費 |
⑤ | 証憑書類が残っており、金額が明確な経費 |
⑥ | 経済的合理性のある契約に基づく、妥当な金額の経費 |
⑦ | 助成金の使途として適切な経費 |
対象となる経費↔対象外経費の項目ごとのポイント
NO. | 項目 | 内容 |
---|---|---|
1 | 開園のための整備費にかかる工事代金・開園前に支出した人件費や消耗品代等 | 運営費の支出は開園後に発生するものに限られるため、対象外。 ただし、当該年度内に導入した防犯・安全対策強化加算、運営支援システム導入加算による支出は対象となる。 なお、整備費や改修支援加算との重複計上はできない。 |
2 | 赤字の繰越 | 企業主導型保育事業は単年度事業のため、赤字の繰り越しは対象外。 |
3 | 積立式保険の保険料 | 積立式保険の保険料については、保険金や返戻金を保育施設運営のために使用することを想定(例:職員の退職金等)し、社内規定などで使途を定めていた場合であっても、保険契約上の使途制限がなければ対象外。 (自己負担で保険料を支払っている積立式保険の返戻金や保険金を原資として、実際に保育施設運営のための経費等を支払った場合は、支払った年度で、その金額を支出として計上。) また、掛け捨て式の保険であっても、保育運営に必要でない保険契約の保険料は対象外。 |
4 | 本部繰入支出・本部借入金支出 | 法人内部の資金の動きであり法人の支出ではないので対象外。 ただし、改修支援加算に係る「改修立替支出」は対象となる。 |
5 | 消費税仕入控除税額報告の返還額・過年度の助成金の精算による返還額 | 保育施設運営に係る支出ではないため、対象外。 |
6 | 減価償却費・貸倒引当金・賞与引当金・ 国庫補助金圧縮損 | 現金支出を伴わない会計上の費用のため、対象外。 |
7 | 本部家賃や保育施設外の事務所に係る支出 | 保育施設に係る支出ではないため対象外。 |
8 | 役員に係る人件費等の支出 | 施設で保育業務に従事している場合も法人役員に対する支出は対象外。 ただし、役員の地位にある者が使用人兼務役員(※)として雇用契約があり、施設運営に従事する職員としての「給与」がある場合、その給与分及び法定福利費等の事業主負担分等は対象となる。 |
9 | 協会以外からの補助金により支払われた支出 | 公益財団法人児童育成協会以外からの助成金や援助金等の収入によって支払った支出は対象外。 当該金額を関連する項目の調整金額欄でマイナス入力が必要。 (なお、独立科目をたて入力することも可能)例:自治体からの「物価高騰対策支援金」等 |
10 | 職員や保護者からの実費徴収等によって支払われた支出 | 助成金による支出ではないため対象外。 |
11 | 法人として一括で支払っている会計事務 所・弁護士事務所等への報酬 | ただし、明確に保育施設分のみに係る報酬であることが確認できる根拠資料(施設に係る金額が明記された契約書、納品書、請求書等や事前に作成された明確な按分基準表及び実績記録等)を備えている場合は対象となる。 |
12 | 本社で保育施設の給与計算や経理をしている者の人件費 | ただし、本社業務を行っている時間と保育施設の業務をしている時間を分ける等、明確にその保育施設のみに係る人件費であることが確認できる根拠資料を備えている場合は対象となる。 |
13 | 本社で一括で支払った保育施設の水道光熱費・広告費・保険料等 | ただし、明確にその保育施設のみに係る支出であることが確認できる根拠資料を備えている場合は対象となる。 |
14 | 園専用車両以外の車両関係費(購入費の他、リース料、レンタル料、燃料費、車検料、その他維持費を含む) | 園で使用している車両であっても、施設運営以外の用途(例:職員の通勤など)に使用していないことが確認できる記録や資料(運行記録など)を備えていない場合は対象外。 また園専用車両として適切とは認められない車種や社会通念上妥当と判断できない価格の車両は対象外。 当該車両を選定・導入 した合理的理由が認められない場合は対象外。 |
15 | 慰安旅行代、忘年会費等 | 助成金の使途として不適切と考えられるため対象外。 同様に、慶弔費、接待費(会食など)、取引先への贈答品代、募金、寄付金なども対象外。 |
助成金確定額の決定後であっても、監査等で証憑類が確認できない場合は対象外支出とされ、助成金の返還を求められることがありますので注意が必要です。
企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和5年度
下のリンクから指摘事項のページに進みます。
マツオカ会計事務所のストーリー
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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。
