勘定科目の解説 資金収支計算書 固定資産売却収入 器具及び備品売却収入 社会福祉法人会計
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説明の内容
管理職になり、初めて社会福祉法人の会計に接することになったお客様へ、 「自分は会計の初心者だ」と思っておられる方々へ、 社会福祉法人会計で用いる勘定科目のイメージを持ってもらうための簡単な説明になります。始めたきっかけはこちら |
厚生労働省の勘定科目の説明 器具及び備品売却収入
器具及び備品売却収入
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
器具及び備品の売却による収入をいう。
科目の簡単な説明をしてみましょう

器具及び備品売却収入
法人が所有する器具及び備品を売却した場合の、売却代金(収入)になります。

収入と収益の違いについて
資金収支計算書と事業活動計算書
まず、収入と収益の違いについて、説明をしていきます。
資金収支計算書では、「収入」と「支出」という表現を使い、
事業活動計算書では、「収益」と「費用」という表現を使っています。
計算書類名 | プラスの科目 | マイナスの科目 |
資金収支計算書 | 収入 | 支出 |
事業活動計算書 | 収益 | 費用 |
計算する対象の違い
資金収支計算書と事業活動計算書では計算の対象が異なるため、「収入」と「収益」のように表現が異なっています。
計算書類名 | 計算の対象 | 計算の考え方 |
資金収支計算書 | (支払)資金 | 法人のお金が 増えたor減った を計算する |
事業活動計算書 | 増減差額 | 法人の純然たる財産が 増えたor減った を計算する |
社会福祉法人の計算書類(資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表)の関係を簡単に表すと下のようになります。

ポイント 計算する対象の違い
資金収支計算書は、貸借対照表の緑色の部分、支払資金(流動資産ー流動資産)の1年間の増減を計算します。
事業活動計算書は、貸借対照表の青色の部分、純資産の1年間の増減を計算します。
法人のお金が増えることは、
法人の純然たる財産が増えることと、ほとんど同じと想像することができるように、
資金収支計算書と事業活動計算書では、同じような科目名(○○収入、○○収益)が用いられることが多いです。
(科目名の類似の例)
区 分 | 大区分 | 中区分 | 小区分 |
資金収支計算書 | 介護保険事業収入 | 施設介護料収入 | 介護報酬収入 |
事業活動計算書 | 介護保険事業収益 | 施設介護料収益 | 介護報酬収益 |
一方で、違うものもあります。
一般的に、自分自身の財布の中のお金が増えることは、自分自身の財産もが増えると考えられますが、
借入金のように、財布の中のお金は増えるけれども、
自分自身の財産は増えない(手許のお金は増えるけれども、借入金(負債)も増える)
ということがあるように、
必ずしも、お金の増減と純資産の増減は一致(対応)しないことがあります。
資金収支計算書と事業活動計算書とを見比べると、分かってきますね。
発生主義と現金主義
一般的な「収入」と「収益」の違い
企業会計などで、一般的に用いる
「収入」は、当年度に収入(入金)があったという考えに基づき計上していくため、
現金主義的な考え方となります。
「当年度にお金が入ってきたため、収入を計上した」というとらえ方ですね。
一方で、
「収益」は、当年度に福祉サービスの提供などによって収益を生んだという考えに基づき計上していくため、
発生主義による考え方になります。
「当年度に、福祉サービスを提供したため、収益を計上した」というとらえ方です。
(この場合に、当年度内での入金の有無は関係してきません。)
現金主義とは:会計処理上の概念の一つ。ある取引による損益や費用を、現金の受け渡しがあった時点で計上すること
発生主義とは:会計処理の原則の一つ。現金の受け渡しや預金の増減とは関係なく、取引が発生した時点で、収益や費用を計上すること。
出典「デジタル大辞泉」(小学館より)
資金収支計算書の「収入」
資金収支計算書の「収入」では、
実際にお金が入った時点(現金主義)で計上するのではなく、支払資金が増加した時に計上します。
支払資金は、上記の図にあるように、「流動資産ー流動負債」で計算されることから
社会福祉法人会計では、(流動資産の)事業未収金が計上された時点で支払資金は増加し、
収入が計上されることになります。
このように、資金収支計算書の「収入」は、
現金主義ではなく、福祉サービス等の提供とともに発生主義的に計上されていくことになります。
このため、資金収支計算書と事業活動計算書で、ほぼ同じ科目名の勘定科目では、
(発生主義に基づく)「事業活動計算書」の収益の金額 = (発生主義的な)「資金収支計算書」の収入の金額
と両者が一致することが多くなります。
勘定科目説明の解説
収入科目の解説について
資金収支計算書の収入科目については、中区分の分類を用いながら小区分の科目を解説していきます。
器具及び備品売却収入
今回、解説する勘定科目の体系は下のようになっています。
大区分 | 中区分 | 小区分 |
固定資産売却収入 | 器具及び備品売却収入 | - |

「施設整備等による収入」の区分の中で
大区分は、「固定資産売却収入」になります。
法人は固定資産を処分する時ことがあります。
固定資産売却収入とは、固定資産を処分する際に、他者(他の事業者)に1円以上で売却する時に、生じます。

中区分は「器具及び備品売却入」です。固定資産である器具及び備品を処分する時に、1円以上で売却できた場合ですね。
社会福祉法人では、保有する器具及び備品を売却することはあまりないかもしれません。
例えば、買取事業者さんに古くなった応接テーブルや厨房機器を更新時に買い取ってもらったりするケースがあるかもしれません。
器具及び備品売却収入と器具及び備品売却益の計算
計算例
器具及び備品を売却した場合、資金収支計算書と事業活動計算書に計上される科目を見てきましょう。
資金収支計算書 | 事業活動計算書 | 貸借対照表(参考) |
器具及び備品売却収入 | 器具及び備品売却益 または 器具及び備品売却損・処分損 | 器具及び備品 |
以下を例に計算してみましょう。
※保有しているコピー機を更新のため、下取りに出した。
区 分 | 内 容 | |
① | 取得価額(購入金額) | 1,150,000円 |
② | 取得した日 | 令和元年11月15日 |
③ | 耐用年数 | 5年 |
④ | 売却した日 | 令和4年8月20日 |
⑤ | 売却代金(下取価額) | 520,000円 |
資金収支計算書
売却金額(⑤)が、車両運搬具売却収入に計上される。
計算書類 | 勘定科目 | 金額 |
資金収支計算書 | 器具及び備品売却収入 | (⑤)520,000 |
事業活動計算書
勘定科目「器具及び備品売却益」で説明します。
計算例の会計処理
計算例の会計処理(仕訳)を「器具及び備品売却益」に記載しています。参考にしてください。
簡単な説明をもう一度

器具及び備品売却収入
法人が所有する器具及び備品を売却した場合の、売却代金(収入)になります。
科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。

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第5巻 | 随意契約 | 45 | 1650円 |
第6巻 | 注記と附属明細書 | 109 | 1980円 |
第7巻 | 社会福祉法人会計簿記の特徴 『大切なのは、1行増えること』 | 52 | 1870円 |
第8巻 | 管理職のための 社会福祉法人会計基準の逐条解説 | 83 | 1980円 |
第9巻 | 利益と増減差額(仮称) |
(第4巻 経営組織は、法人の理事・監事や評議員について解説しています)
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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士 スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、
平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。
