専門的財務監査のポイント㊳ 専門的財務監査の指摘事項(令和6年度)から考える対応と事前準備 ~企業主導型保育事業~
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企業主導型保育事業の専門的財務監査
令和6年度は、企業主導型保育事業の専門的財務監査が400施設で実施されました。
専門的財務監査は、監査法人(公認会計士等)によって行われています。
今回は、こども家庭庁の資料から、令和6年度の専門的財務監査の指摘事項を確認していきます。
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専門的財務監査での指摘事項
指摘事項の内容欄のリンクから、説明ページへ進みます。
| No. | 指摘内容 | 令和6年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|---|
| 1 | ・運営費完了報告の収⽀決算書に助成対象外の⽀出が計上されている。 | 298 | 376 |
| 2 | ・現⾦の管理(現⾦実査等)が適正でない。 | 175 | 219 |
| 3 | ・固定資産の現物実査が行なわれていない。 | 173 | 218 |
| 4 | ・経費⽀出の計上額が不明確または誤っている。 | 144 | 223 |
| 5 | ・保育事業に関わる経理規程が設定されていない、または内容に不備がある。 | 139 | 192 |
| 6 | ・発注業務に関する規程または規定が定められていない。 | 127 | 173 |
| 7 | ・保育事業の予算に対する実績管理の未実施または予算・実績管理帳表作成の不備がある。 | 95 | 118 |
| 8 | ・契約締結に関わる競争見積の取得等、経済的合理性の確認⼿続きが未実施または⼿続の証跡が確認できない。 | 94 | 101 |
| 9 | ・積立資産の管理が適正でない。 | 78 | 51 |
| 10 | ・親族、役員や関係会社との取引の適正性が確認できない。 | 75 | 123 |
主な論点と基本的な対応方針
1 対象外経費の計上是正
• 現状評価:令和6年度指摘298件(約7~8割の事業所に対象外経費の計上が見られる)。
• 必要対応:助成対象外となる支出の範囲を明確化し、元帳ベースで事前点検。
• 業務上の必要性その他やむを得ず支出した対象外経費分は、完了報告時の調整を前提に管理。
👉専門家(公認会計士や税理士)による事前チェックがお勧め
2 現金管理・実査の徹底
• 現状評価:現金実査未実施・不適正が半数弱の施設で指摘。
• 必要対応:現金出納帳の記録と、実地カウント(実査)の定期実施・差異照合。
• 残高管理プロセスの明文化と運用定着。
👉現金実査方法や実施体制を確認してみよう
•3 固定資産の現物実査
• 現状評価:令和6年度173件(約4割)で未実施。
• 必要対応:経理規程に定める現物実査の年1回以上の実施。
• 固定資産が保育に供用されているか、現存性・適正利用の確認と記録化。
👉これまでできていない場合には、経理規程の確認、見直しと実査方法の決定をお勧め
4 経費計上の正確性(金額・内容の整合)
• 論点:元帳記載と領収書・請求書の金額一致、内容の明瞭性が不十分。
• 必要対応:証憑と元帳の突合、内容の具体性(支出目的・期間・対象)の明記。
👉専門家(公認会計士や税理士)による事前チェックがお勧め
5 経理規程の整備不備
• 現状評価:規程の未整備、または社会福祉法人向けモデル経理規程の単純転用による実態不整合が散見。
• 必要対応:企業主導型保育の実態に適合する形で規程を策定・改訂
👉経理規程の全体の再確認がお勧め、自園で作成する場合には、「経理規程案の説明書」をお勧めします。
6 発注業務に関する規定の不足・不備
• 現状評価:指摘約127件(3割強)。経理規程内で発注手続の明記不足が多い。
• 必要対応::経理規程に発注条項を追記、または独立の発注規程を制定(役割分担、見積取得、承認フロー、記録保存)。
👉モデル経理規程には発注業務の条文はほとんどありません。経理規程に追加するか、発注規程を定めることをお勧めします。
7 予算実績管理(予実)の未実施・帳票不備
• 論点:経理規程で要求される予実管理が未運用、差異分析が不十分。
• 必要対応:会計ソフトの予実機能を活用し出力・差異要因整理。機能未搭載の場合はExcelで代替。
• 差異に基づく運営改善の合意・実行。
👉モデル経理規程では、予実管理を行うと定めています。どのように管理をするかは、専門家にご相談しましょう。
8 契約手続(競争性・経済性)の確認不足
• 論点:競争見積の取得や経済的合理性確認の証跡が不足しています。
• 社会福祉法人前提のモデル規程を事業会社に無調整適用すると運用困難。
• 必要対応:自法人の実務に適合した契約手続(金額設定、見積数、例外規定、承認権限、記録)を規程化し遵守。
👉モデル経理規程の契約の章は社会福祉法人の契約手続きを念頭に作成されています。株式会社その他の法人格の場合には、自社に合う形に契約の章を見直すといいでしょう。自園で作成する場合には、「経理規程案の説明書」をお勧めします。
9 積立資産の適正管理
• 論点:計上要件の限定性、取り崩し要件、計画の適正性、様式整備が未徹底。
• 必要対応:児童育成協会の要件・様式に準拠した積立・取り崩し・計画管理と証憑整備。
👉要件の確認とともに、積立・取崩に向けた計画書の作成が大切。積立資産管理規程には、計画書様式も記載しています。
10 親族役員・関係会社取引の適正化
• 論点:第三者取引と比べて、客観性と金額の合理性を証明することが重要です。
• 必要対応:相場比較、複数見積、独立当事者条件(アームズレングス)検証の記録化で妥当性を可視化。
👉親族、役員、関係会社との取引には、契約の必要性や金額や内容の客観性と妥当性、適正性が求められることに注意
実務手順
• 証憑突合標準
• 元帳-請求書-領収書-支払記録の四点突合を標準化。差異は月次で是正。
• 実査サイクル
• 現金:月次実査(締日ベース)、棚卸リストと差異調整簿を保存。
• 固定資産:年1回の現物実査と資産台帳の所在、利用状況、状態の更新。
• 規程ガバナンス
• 経理・発注・契約規程は年1回の見直し、改訂履歴と教育実施記録を保持。
• 予実運用
• 月次で予実集計、主要科目の閾値超え差異に対して原因分析と是正アクションを決定し議事録化。
• 関連当事者管理
• 事前申告・利害管理、取引妥当性の第三者検証記録を保管。
企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度
下のリンクから指摘事項のページに進みます。
企業主導型保育事業に関する4コマ漫画
「まんがの部屋」コーナーでは、内容ごとに4コマ漫画で説明しています。
20年間の社会福祉法人・福祉事業者の支援と、11年間の地方公務員の行政事務で培ったノウハウを 書籍・動画・規程 として公開しています。
ご自身で学び、法人内で活かせるコンテンツをご用意していますので、ぜひご覧ください。

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度
下のリンクから指摘事項のページに進みます。
企業主導型保育事業に関する4コマ漫画
「まんがの部屋」コーナーでは、内容ごとに4コマ漫画で説明しています。
20年間の社会福祉法人・福祉事業者の支援と、11年間の地方公務員の行政事務で培ったノウハウを 書籍・動画・規程 として公開しています。
ご自身で学び、法人内で活かせるコンテンツをご用意していますので、ぜひご覧ください。

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。











