社会福祉法人の会計監査制度

会計監査人監査と任意監査

社会福祉法人の会計監査制度の概要

社会福祉法人の会計監査は、定款に「会計監査人」を置く場合と、定款に「会計監査人」は置かずに行う場合があります。

NO.区分分類設置根拠
特定社会福祉法人に対する
会計監査人監査
法定監査社会福祉法+定款の定めによる
①以外の
会計監査人監査
任意監査定款の定めによる
会計監査人監査に準ずる監査任意監査法人の任意による

会計監査人(定款の定めによる設置)

社会福祉法では、社会福祉法人の会計監査人について下のように定められています。

(機関の設置)
第三十六条 (略)
2 社会福祉法人は、定款の定めによつて、会計監査人を置くことができる。

出典:社会福祉法

特定社会福祉法人(会計監査人の設置が必須となる法人)

社会福祉法で定める一定の規模を超える社会福祉法人は、会計監査人を置くことが義務付けられています。一定の規模を超える社会福祉法人のことを「特定社会福祉法人」と呼びます。

(会計監査人の設置義務)
第三十七条 特定社会福祉法人(その事業の規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人をいう。第四十六条の五第三項において同じ。)は、会計監査人を置かなければならない。

出典:社会福祉法

特定社会福祉法人の判断基準

特定社会福祉法人とは、前年度の決算金額について①または②に該当する社会福祉法人になります。

NO.計算書類判定対象判定基準
事業活動計算書(法人単位)サービス活動収益計の金額30億円超
貸借対照表(法人単位)負債の部合計の金額60億円超

特定社会福祉法人の条件については、社会福祉施行令に定められています。

(特定社会福祉法人等の基準)
第十三条の三 法第三十七条及び第四十五条の十三第五項の政令で定める基準を超える社会福祉法人は、次の各号のいずれかに該当する社会福祉法人とする。
 一 最終会計年度(各会計年度に係る法第四十五条の二十七第二項に規定する計算書類につき法第四十五条の三十第二項の承認(法第四十五条の三十一前段に規定する場合にあつては、法第四十五条の二十八第三項の承認)を受けた場合における当該各会計年度のうち最も遅いものをいう。以下この条において同じ。)に係る法第四十五条の三十第二項の承認を受けた収支計算書(法第四十五条の三十一前段に規定する場合にあつては、同条の規定により定時評議員会に報告された収支計算書)に基づいて最終会計年度における社会福祉事業並びに法第二十六条第一項に規定する公益事業及び同項に規定する収益事業による経常的な収益の額として厚生労働省令で定めるところにより計算した額が三十億円を超えること。
 二 最終会計年度に係る法第四十五条の三十第二項の承認を受けた貸借対照表(法第四十五条の三十一前段に規定する場合にあつては、同条の規定により定時評議員会に報告された貸借対照表とし、社会福祉法人の成立後最初の定時評議員会までの間においては、法第四十五条の二十七第一項の貸借対照表とする。)の負債の部に計上した額の合計額が六十億円を超えること。

出典:社会福祉法施行令

(参考)社会福祉連携推進法人の会計監査の判断基準

NO.計算書類判定対象判定基準
損益計算書サービス活動収益計の金額30億円超
貸借対照表負債の部合計の金額60億円超

会計監査人の資格

会計監査人になれる者

会計監査人は、公認会計士または監査法人となります。

NO.会計監査人になれる者
公認会計士
監査法人
監査法人とは、公認会計士によって構成される法人です。

(会計監査人の資格等)

第四十五条の二 会計監査人は、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)又は監査法人でなければならない。
2 会計監査人に選任された監査法人は、その社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選定し、これを社会福祉法人に通知しなければならない。
3 公認会計士法の規定により、計算書類(第四十五条の二十七第二項に規定する計算書類をいう。第四十五条の十九第一項及び第四十五条の二十一第二項第一号イにおいて同じ。)について監査をすることができない者は、会計監査人となることができない。

出典:社会福祉法

会計監査人が使用してはいけない者

会計監査人は、会計監査人を置く社会福祉法人の理事、監事、職員、さらには、その法人から継続的な報酬を受けている者(顧問など)を監査の補助者として使用することはできません。

NO.使用してはいけない者
理事
監事
職員
法人から継続的に報酬を受けている者

第四十五条の十九 (略)
5 会計監査人は、その職務を行うに当たつては、次のいずれかに該当する者を使用してはならない。
 一 第四十五条の二第三項に規定する者
 二 理事、監事又は当該会計監査人設置社会福祉法人の職員である者
 三 会計監査人設置社会福祉法人から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者
(略)

出典:社会福祉法

会計監査人の職務

監査の実施と監査結果の報告

会計監査人は、社会福祉法人を監査し、監査の結果を「監査報告書」として報告します。

NO.監査の実施の監査報告の対象
計算書類
附属明細書
財産目的
その他厚生労働省が定める書類
監査対象範囲は、原則として、法人全体に係る部分になります。

第四十五条の十九 会計監査人は、次節の定めるところにより、社会福祉法人の計算書類及びその附属明細書を監査する。この場合において、会計監査人は、厚生労働省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。
2 会計監査人は、前項の規定によるもののほか、財産目録その他の厚生労働省令で定める書類を監査する。この場合において、会計監査人は、会計監査報告に当該監査の結果を併せて記載し、又は記録しなければならない。
3 会計監査人は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は理事及び当該会計監査人設置社会福祉法人の職員に対し、会計に関する報告を求めることができる。
 一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもつて作成されているときは、当該書面
 二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したもの
4 会計監査人は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人設置社会福祉法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
5 会計監査人は、その職務を行うに当たつては、次のいずれかに該当する者を使用してはならない。
 一 第四十五条の二第三項に規定する者
 二 理事、監事又は当該会計監査人設置社会福祉法人の職員である者
 三 会計監査人設置社会福祉法人から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者
6 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百八条から第百十条までの規定は、会計監査人について準用する。この場合において、同法第百九条(見出しを含む。)中「定時社員総会」とあるのは、「定時評議員会」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

出典:社会福祉法

監事への報告義務

会計監査人は、不正行為等を発見した場合ときには、監事に報告する義務があります。

また、監事は、必要に応じて、会計監査人に監査の報告を求めることができます。

NO.区分監事への報告義務
不正理事の職務執行に関する不正の行為を発見した時
法令違反理事の職務執行に関する法令に違反する重大な事実を発見した時
定款違反理事の職務執行に関する定款に違反する重大な事実を発見した時
監事からの求め監事が職務において必要と認めて、監査の報告を求めた時

(監事に対する報告)
第百八条 会計監査人は、その職務を行うに際して理事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監事に報告しなければならない。
2 監事は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対し、その監査に関する報告を求めることができる。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

定時評議員会での意見陳述

会計監査人は、定時評議員会に出席し、意見を述べることができます。
定時評議員会から出席を求められた場合には、出席して意見を述べる義務があります。

NO.区分評議員会での意見陳述
監事と監査意見が異なる時監査報告における監査意見(適否)について監事と意見が異なる時
評議員会が求める時評議員会決議において、会計監査人の出席が求められた時

(定時社員総会における会計監査人の意見の陳述)
第百九条 第百七条第一項に規定する書類が法令又は定款に適合するかどうかについて会計監査人が監事と意見を異にするときは、会計監査人(会計監査人が監査法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員。次項において同じ。)は、定時社員総会に出席して意見を述べることができる。
2 定時社員総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時社員総会に出席して意見を述べなければならない。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

会計監査と指導監査の監査周期

会計監査や会計専門家の支援を受けている社会福祉法人には、所轄庁の指導監査の監査周期が延長される措置が取られています。

指導監査の種類

区分一般監査特別監査
周期一定の周期で実施随時に実施
内容実施計画を策定し、「指導監査ガイドライン」に基づき実施運営等に重大な問題を有する法人を対象として実施。
一般監査の途中で重大問題を発見した場合、特別監査に切り替えることもできる。
監査周期の延長あり

一般監査の監査周期の延長年数

(1)法人本部運営等に、特に大きな問題が認められない法人

区分区分監査周期
原則一般の法人3年に1回
延長可会計監査人設置法人5年に1回
延長可会計監査人に準じた会計監査の実施法人5年に1回
延長可専門家による会計支援を受けた法人4年に1回
延長可苦情解決の取組みが適切に行われ、
地域社会に開かれた事業運営等を行う法人
4年に1回

(2)(1)以外の法人

区分区分監査周期
原則継続的な実施

会計監査人の選任・解任

通常の選任・解任決議

会計監査人は、評議員会の決議により選任・解任します。

また、会計監査人の選任・解任については、監事の過半数の承認(決定)が必要です。

NO.決議機関
評議員会の決議
監事の過半数の承認(決定)
監事の数が2名の場合、過半数は2名になります。

(役員等の選任)
第四十三条 役員及び会計監査人は、評議員会の決議によつて選任する。
2 前項の決議をする場合には、厚生労働省令で定めるところにより、この法律又は定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。
3 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第七十二条、第七十三条第一項及び第七十四条の規定は、社会福祉法人について準用する。この場合において、同法第七十二条及び第七十三条第一項中「社員総会」とあるのは「評議員会」と、同項中「監事が」とあるのは「監事の過半数をもって」と、同法第七十四条中「社員総会」とあるのは「評議員会」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

出典:社会福祉法

(会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定)
第七十三条 監事設置一般社団法人においては、社員総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監事が決定する。
2 監事が二人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「監事が」とあるのは、「監事の過半数をもって」とする。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

監事の全員同意による解任

会計監査人が一定の条件に該当したときは、監事全員の同意による会計監査人の解任もできます。

NO.区分監事の全員同意による解任事項
職務違反

職務上の義務に違反し、又は職務を怠った時

非行

会計監査人としてふさわしくない非行があった時

心身の故障

心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。

監事の数が2名の場合、過半数は2名になります。

(監事による会計監査人の解任)
第四十五条の五 監事は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、当該会計監査人を解任することができる。
 一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき。
 二 会計監査人としてふさわしくない非行があつたとき。
 三 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
2 前項の規定による解任は、監事の全員の同意によつて行わなければならない。
3 第一項の規定により会計監査人を解任したときは、監事の互選によつて定めた監事は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される評議員会に報告しなければならない。

出典:社会福祉法

会計監査人の任期

会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する会計年度のうち、最終のものに関する定時評議員会の終結の時までです。

NO.区分任期
任期選任後1年以内の定時評議員会の終了時
再任定時評議員会で別段の決議がなかった時は再任する
定款変更定款の会計監査人を置く定めを廃止した時は、任期満了する
監事の数が2名の場合、過半数は2名になります。

(会計監査人の任期)
第四十五条の三 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。
2 会計監査人は、前項の定時評議員会において別段の決議がされなかつたときは、当該定時評議員会において再任されたものとみなす。
3 前二項の規定にかかわらず、会計監査人設置社会福祉法人が会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計監査人の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

出典:社会福祉法

会計監査人の報酬の決定

会計監査人の報酬を定める場合には、監事の過半数以上の同意が必要です。

NO.同意機関
監事の過半数の承認(決定)
監事の数が2名の場合、過半数は2名になります。

(会計監査人の報酬等の決定に関する監事の関与)
第百十条 理事は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
error: Content is protected !!